誰もがファッションを楽しめれば、それは幸せなこと。
hiromichinakanoの2016-17のショーが渋谷ヒカリエホールBにて発表された。
会場には紙ヒコーキの模様が映し出される演出がなされており、さらにThe Supremesの音楽が観客の気分を上げる。
特に注目を集めたのは、パステルカラーのモンドリアン柄のルックだ。
中野氏は、サンローランのモンドリアンを超えるものはできないが、モンドリアンのバイアスを使ったものに2、30年前に挑戦したものに再挑戦したという。
いつまでも色褪せないデザインをリスペクトし、そのバイアスを利用して自らのスタイルに進化させる技術は約40年間デザイナーとして活躍し続ける大ベテランだからこそ成せる技だろう。
リアルバービー人形として話題になったダコタローズもモデルとして登場し、150センチ代という小柄な体型でもサイズをデフォルメせずに、個性を生かしてファッションを楽しむことを提唱した。
身長を気にして着たい服が着れないという経験をした人は決して少なくないはずだ。しかしそれをファッションショーという場で個性と捉えて肯定したことによってファッションの幅が広まり、多くの人がよりファッションを楽しめるようになればそれはとても幸せなことだと思う。
今回のコレクションでは、1960〜70年代の時代を象徴するキーワードが多く登場し、淡く軽やかで、柔らかい印象のスタイルで表現された。
それは、その時代全てというわけではなく、「この時代のこれが好き」という限定されたものあり、青春時代にさまざまな形で強くインスパイアされたものの数々であると中野氏は語った。
中野氏は、自らのコレクションをまだ未完成と表現。十分なキャリアを持つデザイナーのこの言葉には衝撃を受けた。年齢を重ねてもなお漲るパワーや豊かなアイデアで今回のコレクションから次回へどう繋がっていくのか、一ファンとして非常に楽しみである。
text/Fumi Suwa
photo/Fumika Sano