Fashion

246stMARKET talk show

 2020年10月14日、東京・表参道エリアに位置するワールド北青山ビルにてクリエイター系ブランドをセレクトした期間限定ストア「246stMARKET」のトークショーが行われた。246stMARKET初日のトークショーのテーマは、「サーキュレーション・ライフスタイルを考える」。ファシリテーターにフリーアナウンサーの佐々木瞳氏を迎え、株式会社ティンパンアレイ代表平野大輔氏、FERMENSTATION代表酒井里奈氏、日本サステイナブルコーヒー協会理事長兼東京大学東洋文化研究所教授池本幸生氏の以上4名が登壇した。

 SDGsの取り組みが拡大する中、アパレル破棄の増加は深刻な問題だが、近年ライフスタイルの多様化によって、アパレルにおける市場関係や価値観に変化が見られる。シェアリング展開やフリマアプリの浸透というようなCtoCの広まりの背景には、所有から共有へという消費者意識がある。そこに、リユースという選択肢がある。株式会社ティンパンアレイは、古着の販売・買取、リメイク、シェアリングサービスなどを行なっている。良いものを長く使って欲しいという考えを軸に、ハイブランドのアイテムを低価格で提供する。代表の平野氏は、「リユースという手に届きやすいアイテムをきっかけにブランドの良さに触れていただくことで、お客様にファッションの価値を知ってもらいたい、かつ環境にも優しいという側面も伝えていきたい。」と話す。

不要なものから考えるサステイナブル

 FERMENSTASIONは、米の粕やりんごの粕など、通常であれば捨ててしまうものを、アルコールや化粧品などの原料として再利用する事業を展開している。代表の酒井氏は自身の環境問題への意識の高まりについて、「昨今の異常気象や気候変動などが、もしかしたら自分たちの生活と多少なりとも関係があるのではないか、と日常生活の中で感じ始めたことがきっかけの一つになった。皆さんがそうした意識や感覚を持つことは、実際にアクションを起こすことと同じ意味を持つ。」と話す。

気候変動はコーヒー産業とも繋がりが深い

 日本サステイナブルコーヒー協会は、コーヒー農家と貧困についての認知を日本の消費者に広める活動を行っている。コーヒーの価格が下がれば、農家は生産や生活に十分な利益を得られず、産業全体の持続可能性も損なわれる。こうした不平等な構造の認知拡大を目指すこの活動は、同ポップアップのテーマでもある「サーキュレーション・ライフスタイル」とも通ずる。2050年問題の一つとして、気温上昇によりコーヒー豆の収穫量が現在の50%にまで減少するという報告もある。ファッション業界のみならず、私たちはサステイナブルという言葉をより包括的に捉える必要があるのではないだろうか。

 サステイナブルという言葉やムーブメントが社会的に認識され、身近なものになりつつあるが、単なる「共感」だけで終わらせてはならない。サステイナブルを日常に浸透させていくためには、消費者である私たちがそれに関連したプロダクトを実際に手に取り、生産背景への理解を深めることが重要だ。もちろんそうしたプロダクトにもデザイン性・ファッション性は不可欠であるが、同ポップアップに出品していたプロダクトからは、そのような価値付けに対する企業努力を感じることができた。

text/ 守谷恵、相馬夏奈

photo/ 松田あやね