Asian Fashion Meets Tokyo(Philippines) 2017 s/s collection
10月22日、渋谷ヒカリエ11階ホールAにて、Asian Fashion Meets Tokyo(Philippines)のショーが行われた。昨年に引き続き、経済産業省による技術協力研修プログラムの一環で、研修生として日本に招かれたフィリピンの若手実力派デザイナー3人による研修結果発表の場であるとともに、フィリピンのデザインの質の高さや独創性を多くの人々にアピールできる場となっている。
トップバッターを飾ったのはカール・ジャン・クルーズ。生地も含めて自国の素材にこだわり、自身の心情や技術をそのまま作品に盛り込むアプローチ方法によって作られる服には、彼そのものがよく表現されている。
フィリピン系オーストラリア人であるカレン・トゥパシオは、フィリピンの自然やオーガニック的要素と、オーストラリアの現代的な感覚をミックスしているのが特徴。
最後に登場したセフ・バガサオによる「BAGASAO」は、毎シーズン最低で3つ以上の工場と直接契約をするほど、素材や製作過程を徹底している。ジェンダーレスでユニークなデザインの中に機能性やバランスが備わっていた。
インタビューで「クオリティを重視する日本のマーケットの多様性に刺激を受けるし、実際にまずは東京からアクセスすることが大事」と話していた。このようなプログラムをきっかけに東京ファッションウィークを目指すフィリピンのデザイナーたちが増えることが期待でき、こういった発展途上国からの注目は東京がアジアンファッションの中心として息づく必須条件となるだろう。
一方で、常に低姿勢で学習に意欲的なデザイナーたち、現地のオリジナリティを大切にしつつもストレートかつ独創的なデザイン力など、日本がフィリピンから学び成長できる部分も同じくらいはっきりと見えてくるようだ。今回のショーではフィリピン最大のアパレルライフウェアブランドであるBENCH/が全面的なスポンサーを担当しており、そういった部分からもフィリピンのファッション産業の熱量を感じた。
また、昨年から続く”次世代の日本人モデル発掘プロジェクト”である「Debutante Model Project」という企画で、全国各地から世界での活躍を目指す若手日本人モデル10人のランウェイ初お披露目が今回のショーであった。歩く彼らの表情はフレッシュながらも自信に満ちていて、モデルという立場から日本、アジアの服飾業界を盛り上げてくれそうだ。ファッションウィークとそれに関連した企画を通して日本とフィリピン、双方のファッション業界がお互いに協力しながら発展してきていることを、直接実感することのできた今回のコレクション。それぞれが対等な立場に立って互いを尊重しながら挑戦していく、両国の交流と今後に期待したい。
Text/Saori Ueda
Photo/Hiroshi Nagayama, Yuichiro Hagiya