Fashion, Collection, Tokyo 2019 S/S

liroto 2019S/S Collection


少女たちの中に混在する甘さと強さ


lirotoの2019年春夏コレクションが10月19日、青山・Palm maison TOKYOにて発表された。
前回のAmazonFashionWeekTokyoにて発表されたデビューコレクションから大きく変わり、これというテーマを決めず、今回は大胆な演出も見られなかった。
今季の話の始まりはデザイナー、富塚氏の心を奪った「カネコアヤノ」の音楽。
シンガーソングライターの彼女の曲で今季のコレクションが作られた。
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金曜の夜、青山の静かな路地に入っていくとそこにはすでにお客が集まっていた。
人がぎゅうぎゅう詰めの真っ暗で小さな会場でショーの開始を待ちわびていると一つのスポットライトに灯りがつきギターを抱えたカネコアヤノが登場。
ギターの旋律と時々聞こえるノイズ、そこに重なるカネコ氏の優しくも力強い歌声に会場が彼女の空気に包まれた。
『きみをしりたい』『週明け』『ゆくえ』以上3曲を披露。
1曲目は富塚氏お気に入りの曲。2、3曲目はカネコ氏自ら歌いたいと提案がありコレクションの雰囲気ともぴったりだった為披露されたようだ。
音楽に合わせ、ゆっくりとした足取りでモデルがランウェイに登場した。
”少女感”が大切にされたliroto特有の甘く優しい服をまとうモデルたち。
複雑なディティール、チューリップ・小花柄、ギンガムチェック、リボン、チュール、ギャザーなどといった心ときめくモチーフが多く見られ、前季と同じく黒や白、グレーが多く使われていた。
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甘いルックとは裏腹にモデルたちのパンチの効いたヘアが独特で、それは甘く可愛らしくも鋭く力強いパワーを秘めた少女の像を連想させた。

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少女時代こそ無垢で純粋な女の子たちの可愛らしさが詰め込まれた時期のように感じると思いがちだが、この時期こそ社会や大人たち、外の世界への疑問や反発もたくさん持ち合わせていると感じる。
自分自身も学生であり毎日このような色々な感情を巡らせながら生活をしている。
その為lirotoが表現する可愛さだけではなく、不安定で少し危なっかしくもあるような少女の像がストレスなく、スッと入ってきた。
これはカネコ氏の歌からもだ。
一見優しい歌声かと思えば強弱をつけ力強い声とギターの音。感情のこもった強い意志のある曲。
いわばロックのようだった。
それぞれに相反するポイントがあり、そこが共通点のように見えたのだ。
特にテーマを設けて製作したコレクションではないと富塚氏は話していたが、自然とlirotoらしさでまとめられたショーが作り上げられたように見えた。


Text/櫻田美羽
Photo/佐藤楓