今日着る服が今日の自分を生み出す。
2017年3月23日、AKIKO AOKI(アキコアオキ)は渋谷ヒカリエBホールにて2017秋冬コレクションを行った。
今回のテーマはprimitive(プリミティブ)。日本語では「原始的」という意味を持つ。人間が生まれながらにして持つ土臭さや力強さに立ち返るという考えから始まったコレクションであるが、一見ルックを見ただけでは軽やかなドレスやシャツが多く見受けられ、原始的なイメージは浮かばないかもしれない。しかしながらそこに生まれるギャップこそがデザイナーである青木明子氏の考えの核心であった。
土臭さや土着的といった言葉は重く、湿っぽいイメージを受けることが一般的だ。しかしそのイメージにドレープや柔らかさを付加することでエレガントさを演出し、見事なコントラストを生み出したのである。さらに人間と服の空間を意識することによって布の動き、また、体から感じる流れにそのまま身を任せることができる。
このように服と人間の関係性を考えた時、あなたの頭には何が浮かんでくるだろう?毎日の服を選ぶ基準となるのは暑さや寒さをしのぐためのものであったり、TPOに応じたつまらないものかもしれない。
しかし人間が服を着る、という当たり前の行為には様々な意味を見い出すことができるのではないだろうか。何にもとらわれず服を自由に選ぶ時は、好きなシルエットの服を着たり、自分という存在を表現するために服をチョイスする。見方を変えるだけで服によって誰でもない、自分自身の生き方を描く力が持てるようになるはずだ。朝、今日着る服を選ぶと同時に今日の自分を生み出せる、そんなことを考えた。
今回のコレクションで服の着方や服への意識の向け方について改めて考え直すきっかけになった。
text/坂本 遥
photo/田近咲菜