なりたいのは「何者」?
協会のなかで行われたtiit tokyo(ティート トーキョー)のショーは「leave」がテーマ。自分のありのまま生きることがうまくはできないが、それでも前に進もうとする女性の決意による美しさである。
ルックは所々にパステルカラーなど明るい色を忍ばせながらも、モデルは雨に打たれたようなヘアスタイルとひたすら泣いた後のようなアイメイクで、人生への「前向きな気持ち」と「切なさ」が入り交じった風貌に。アイテムもレザーや胸元の開いたシャツなどの大人びたものが多いが、明るめの色使いが使われている。少女から大人への階段を上るといったようなストーリー性がより滲み出ている。
最近、浅井リョウ原作、三浦大輔監督・脚本の映画で「何者」という映画が公開された。若者たちが就職活動、いわゆる「就活」という人生の分岐点を経ていく中での葛藤などから自分が「何者」であるかを探り、「何者か」になろうとする物語。この映画の結末などはおいておき、人はだれしも自分が「何者」であるのだろうかという問いを一度は問いかけ、「何者か」になりたいことが多い。特に若者の場合は(当たり前だが)その思いが強い人が多い。
また、同じく最近公開の大根仁監督、福山雅治主演の「SCOOP!」でもこんなセリフが。
「何者かになりたかったんだろうな…。でも、何にもなれなかった。」
年は変わって浦沢直樹原作漫画「20世紀少年」。この漫画に登場する正体不明の「ともだち」含め、登場人物は皆「子供の時のなりたい自分」と「大人になった時の自分」を比べるシーンが多い。主人公の遠藤ケンジは、ロックスターになりたかったのに、コンビニの店長をやりながら自分は今なにをしているのか問いかけたりする。同窓会のシーンでは「あいつはやっぱりああなった!」などの会話。なかでも「ともだち」は子供の頃「なりたかった自分」と、「なれなかった自分」とのギャップに折り合いがつけられなかった結果、人間はみんな死んじゃえばいいというところまで行く。彼にとっての「何者」の答えは「ともだち」だったのだろうか?
「自分が何者なのかを探る。」
映画や漫画の作品にも多く登場するこのテーマ。tiit tokyoというブランド、デザイナー2人の成長 ・進化する過程も今回のテーマに反映されているのではないだろうか。壁にぶつかり、葛藤しながらも進むことは生きることそのもの!
Text/藤田海斗
Photo/加藤華耶