Interview

MINOTAUR ディレクター 泉栄一氏

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「僕はこの活動を通じて地元や地域、そこに住む人たちに貢献がしたい。」
 


泉栄一。福岡県出身。ファッションディレクター 、時には大手セレクトショップのディレクション、時にはDJなど幅広い才能を持つ。 2004年よりファッションブランド「MINOTAUR」(ミノトール)を本格始動させる。近年ではイタリアのピッティウオモ(世界最大規模のメンズプレタポルテの見本市)にも精力的に参加し、活動の場所を広げている。しかし、泉氏は服飾の専門学校卒でも、ファッション好きが高じてこの世界に足を踏み入れたわけではない。彼は何よりも地元や地域の人々に「貢献」したいと言う。ブランド設立から約10年、これまでの過去、そして未来、加えて泉氏が何よりも大切にしている想いをインタビューした。
 
 

■幅広く活動をされていらっしゃいますが、「MINOTAUR」が始動する以前は何をされていたんでしょうか?
 
元々は福岡でインポートブランドの輸入や販売業務をしていました。バイイングやディストリビューターですね。あとは海外ブランドのディレクションを手伝ったりしていました。皆さんがご存知のブランドも多数取り扱っていましたよ。海外出張も多かったので、雑誌やテレビでは収集できない情報を体験できたんですね。「海外」のカルチャーを洋服やレコード、おもちゃを通じて伝えたいという思いでやっていました。するとそこに好奇心がある子たちが集ってくるんです。福岡にあって、その店が海外のものを発掘する、そういう役割をしていたんです。
 

■それがキャリアのスタートで、その後ブランドを設立するに至ったのはどういう経緯でしょう?
 
当時その会社で代理店をしていたブランドが日本で認知されるようになると、どうしても大手に権利が移ってしまうんですね。お客様に対して突然「取り扱いが違う店舗になりました」とお伝えすることも多々あって。そこでお客様に対して何か自分たちで提案できないかと思い、「MINOTAUR」というプロジェクトを立ち上げました。


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■当初はどういったラインアップだったのでしょうか?いきなりブランドを設立すると言っても、デザイン面で困難されたり、そういったことはなかったのですか?
 
一番最初の作品はTシャツでした。それを圧縮して缶に詰めて販売していました。バイイングをしていた頃によく出張でニューヨークに行っていたので、グラフィックTシャツを目にする機会も多くて、Tシャツを見る目は肥えていると思ったからです。そういうなかで、じゃあ自分らしさはなんだろう、自分の立ち位置はどこだろう、それを凄く考えていましたね。だから最初の作品はTシャツのみ。そもそもインポートのデザイナーと同じスタンスのものは作れないだろうなと思っていましたし、何よりもリアリティーの有ることをしたかったですしね。アイデンティティーのない物作りはしたくなかったんです。あと、私自身は自分のことを洋服のデザイナーではなくて企画者だと思っています。デザイナーという意識はありません。
 

■なるほど、デザイナーとしての意識がないというのには驚きました。ではTシャツのデザインどうこうではなくて、圧縮されたそれを缶に詰めて販売するという「企画」で勝負したということですね。
 
そうですね、既存の洋服の売り方を変えたいと思っていました。そこでスーパーの棚に陳列されてある缶詰のようにTシャツを売ることにしたんです。僕は小学校の頃から洋服屋さんに通い詰めていて、先輩から色々な影響を受けたんですが、彼らの洋服の売り方をそのままマネするのは嫌だなと思っていたんです。影響を受けてそれをそのままマネする、それはフィフティフィフティの関係ではありませんよね。自分が彼らから受けた影響を自分の中で解釈して、それを踏まえた上で「じゃあこういうのはどうですか?」と自分で提案するのが一つの恩返しの方法だと思うんです。それで思いついたのがTシャツを缶に詰めて販売するというもの。ちなみに缶の柄はボーダーとチェックの2種類で、そのなかに入っているTシャツの柄もボーダーとチェックの2種類で、缶はペンケースなどのインテリアとしても使える様にしました。インクジェットの技術とか時代的になかったので、当時80万以上もするMACを買って(笑)、地道にやっていましたね。



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■その他の企画で何か印象に残っているものはありますか?
 
2作目ですね。こちらも引き続きTシャツたっだんですが、これは当時代理店をやっていた海外のアーティストから未来に対するメッセージをもらって、それをプリントしたものをパネルに飾って美術館のように展示して販売したんですよ。美術館に飾られてる絵画って、その下か横に紹介文が書いてあるじゃないですか。それをまねて、そこに製品表示を書いたりして、そしてこのメッセージが好きっていう方に奥から新品を持ってくる。そういうスタイルでしたね。アーティストさんの力を借りて、要するに人の得意分野を合体してたわけですよね笑 当時はあまりコラボレーションという言葉が存在していなくて、その2、3年後ですかね、徐々にコラボレーションが定着してきたと記憶しています。
 

■活動の源、信念や理想のようなものがあればお聞かせください。
 
当時お店をやっていたときから今現在も、地元の地域や街に対して文化貢献をするということが自分のなかでは大きな軸になっています。父がフランス料理のシェフをやっていて、自営なので僕は商売家庭で育ったんです。地元で商売をするというのはモノの売り買いよりもその地域に貢献してこそ、そしてその環境があって、人がいて、そのおかげで店があってというのが無意識のうちに自分のなかにあったんでしょうね。
 

■「MINOTAUR」というプロジェクトを通じて、具体的にどのように地域に貢献していきたいとお考えですか?
 
一言で言えば人と人との繋がりを作っていきたいと思っています。僕の作る洋服を届けるとかではなくて、僕の活動がきっかけになって、例えば地元の人と東京の人、そして海外の人とが繋がりを持てるようにしていきたいですね。親のありがたみが一端離れてみると分かるのと同じで、ホームに縮こまるのではなくて、アウェーに触れることは大切なことだと思うんです。そうすることで地域のことがより分かるようになるはずですから。



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■ブランド設立から10年を迎えられて今どういうお気持ちですか?また、海外展開についてはピッティウオモに出店されていると伺ったのですが。
 
今まで僕は営業やプレスの仕事をあまりしてこなかったんです。でもブランド設立から今年でちょうど10年になり、やっとスタート地点に立てたと思っています。これでやっと多くの人に「見てください」と言えるようになりました。海外展開に関してはイタリアのピッティに参加しています。当時代理店だったデザイナーのブランドも出店していて、同じ立場に立ったら嫌がられるかなと思ってたけどそこはウェルカムでした笑 ありがたかったですね。
 

■海外での反響はどうですか?
 
1、2シーズンはダメでしたね。先輩からも海外では4シーズンはオーダーなんかつかないよと言われていたんですが。でも3シーズン目になってようやくいつもは見るだけのバイヤーがボスを連れてきてオーダーをつけてくれたんです。ロンドンにある「プレゼント」っていうセレクトショップで、ありがたいことに自分が中学高校のときに憧れていたブランドの創設者がやっているショップなんです。先ほども申しましたが、僕はフィフティフィフティの関係を大事にしたいと思っていて。影響を受けたから、それを返す。その方のおかげで自分の表現に磨きがかかって、その自分が手がけた商品を、影響を与えてくれた張本人がオーダーしてくれたのはすごく嬉しかったです。
 

■何が評価されて3シーズン目にしてオーダーをつけてもらったとお考えですか?
 
軸がぶれないかどうかじゃないでしょうか。ブランドとしての安定感、コンセプト、そして会社の姿勢、そこがみられているような気がします。でも自分もそういうスタンスでやってきたし、そういう意味では海外とは近いものを感じましたね。実際にオーダーしてもらったのも素朴なシャツやジャケットでしたし、派手なデザインとかそういう目でわかる部分じゃなくて、ちゃんと洋服っぽさをみてくれたんだなという印象です。僕らのブランドが残るか残らないかってそこだと思う。面白いデザインでしょではなくて、洋服としてのムードが大切だと思います。まだ10年ですが、まだまだこれからです。




Text / Daiki Iihara

Photo / Azusa Sato




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MINOTAUR OFFICIAL WEBSITE
http://www.minotaur.co.jp/2013ss/

M a round WEBSITE
http://www.maround.com/

MINOTAUR SHOP TOKYO
目黒区青葉台1-6-58
Tel.03-6416-4174
http://www.minotaur.co.jp/

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