Fashion, Interview

株式会社クール・ジャパン推進機構(仮称)設立 新しいクール・ジャパンの今後の展望

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株式会社クール・ジャパン推進機構(仮称)設立

 
新しいクール・ジャパンの今後の展望
 


日本のソフトパワーを国内外へ発信し、日本の経済を活性化させる目的をもったクリエイティブ産業政策、クール・ジャパン戦略に今年度から起こる大きな変化があるという。
 

以前は、そのソフトパワーの中でもファッションは例外ではなく、主軸となる分野であるというお話、ファッション分野においてのクール・ジャパンの活動とマクロな視点で見たときの日本のファッションシーンの抱える問題点などを経済産業省クール・ジャパン海外戦略室長補佐の小田切未来氏にお伺いした。
 

今回は、戦略の抜本的な変化、その背景など、よりクール・ジャパンそのものにフォーカスしたお話をお聞きした。
 

小田切氏は、今回の主な取材内容である株式会社クール・ジャパン推進機構(仮称)の立ち上げを初め、商業施設とテナント企業の海外展開を促進するためのマッチングの場の構築を目的としたクール・ジャパン大会議流通編の実施、クール・ジャパン関連の積極的な広報などの独自な活動の貢献により、若い経営者・学生、関係業界を中心に、クール・ジャパンの土台をわずか2年程度で作ったことによる実績やファッション・コンテンツ等のクール・ジャパン関連分野に対する熱い思いが評価され、最近は「ミスター・クール・ジャパン」の愛称で呼ばれている稀有な若手官僚の一人だ。

■株式会社クール・ジャパン推進機構(仮称)
 

今秋頃の設立を目指した株式会社クール・ジャパン推進機構(仮称)は、これからのクール・ジャパンを体現する幅広い日本企業の海外展開を支援するための組織名だ。
 

先月15日、株式会社設立などに関係する法案が閣議決定した。
 

小田切氏—クール・ジャパンに関連するファッション、メディアコンテンツ、食文化などをまとめて推進するための予算は、平成24年度は約10億円ありましたが、それだけの額では、抜本的な海外展開の支援を行なえず、日本の企業の海外展開は飛躍的に進まないと感じ、組織を設立するという考えに至りました。

■事業支援で見えてきた問題
 

小田切氏—例えば、ファッション分野では、アッシュ・ペー・フランスの事業で、ラフォーレ原宿などと組みながら原宿ブランドを台湾の特設会場で販売する際の支援などを行ってきました。また、パルコが日本ファッション・ウィーク推進機構と組みながら、渋谷ブランドなどをシンガポールに進出させる案件などについても、クール・ジャパン関連事業が絡んでいます。
 

今までは、一つのプロジェクト当たり数千万円程度の支援でしたので、ブランドの商品そのものを取りまとめて、海外に持っていくことしか出来ませんでした。今回は、モールのような大規模な商業施設、店舗を集積させた裏原宿のようなストリートをそのまま海外にファッションとパッケージで展開する事業者への支援が可能になると考えています。
 

あらかじめ、場を確保しておくことで足がかりとなる拠点も整備できればと考えています。商業拠点を得るためには、現地の母国語で法律・人事の問題などの交渉を行う必要があり、これは大きな障壁になっているとも言われています。そんな中、日本のエリアを海外に作ることは、大きな助けになるでしょう。また、海外経営の情報・ノウハウ不足もクール・ジャパンの専門的なサポート、ハンズオンでの経営支援を提供することで解消していきます。

■予算規模が約50倍になったきっかけ
 

小田切氏—多くの日本企業の海外展開ニーズを聞いたところ、日本企業が海外展開をするための拠点となる空間を構築していくには、数十億円~数百億円程度の資金がかかるということが分かってきました。
 

少子高齢化に伴い国内需要が減少している日本で、持続的な経済成長を実現するため新興国市場での競争に諸外国に遅れをとるまいと積極的な海外展開の必要性とこのような企業の現状を財務省に説いた結果、実現しました。産投出資という国のお金と民間出資から成り立っています。産投出資は500億円、以前の50倍の予算です。民間出資については未定ですが、できる限り集めていきたいと考えています。
 

出資案件は、国が選ぶのではなく、海外需要開拓委員会というものを作り、そこに客観性・中立性を担保しつつ、専門的知見を有するメンバーの合議により決定します。基本は民間の方々。有象無象くる案件の中から、現在検討中ですが、国の魅力に繋がるか、他の事業者に対して波及効果はあるか、収益性があるかなどの支援基準を設けることを想定しています。


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■ねらいは?
 

小田切氏—ねらいは4つあると考えています。1点目が幅広い日本企業の海外進出の拡大を円滑化し、海外市場の獲得を集中的に加速化させていくこと。2点目が民間企業の知を結集させる起爆剤として日本企業の新たな海外展開戦略を切り開くこと。3点目が大企業だけではなく、通常ならば難しいと思われる地方の企業の海外展開、ファッションの分野でいうと、例えばですが、気鋭のデザイナーズブランドの海外展開の支援を行うこと。4点目が先ほども申しましたが、出資支援だけでなく、経営支援、政府のバックアップを行うこと。
 

単品の海外展開の支援もありうると考えているのですが、基本的には海外のプラットフォームになりえる企業へ出資をし、大亀のプラットフォームに小亀が乗れる環境を作ることが重要であると考えております。
 

事業である限り、成功と失敗はあります。我々が目指すのは、仮に3勝7敗であっても、その3勝が最終的に7敗の損失を上回り、最終的に収益を一定程度確保できればと考えています。出資なので、最終的には国の税金を無駄遣いしないという観点から国に還元することが求められます。


■日本の魅力を伝えるための食、アニメ、音楽などの日本の文化の中でファッションの役回りはどのようなものになるのか?
 

小田切氏—戦略の一つであって、出資対象の主人公ではない場合もありますが、フレーバーとしては一番大事だと思っています。商業施設、店舗集積型のストリートには必ずファッションは必要です。
 

ファッションは、その国の人の肌の色に合う色、日本人の体格に近いかどうか、適した価格帯か否かなど定性的に分析した結果、新興国をターゲットにしているというのはあります。あとは、例えば、シンガポールは四季がないので、そのような各国による特性も踏まえてファッションも戦略を構想しています。

■ファッション業界で海外志向の人は少ないか?
 

小田切氏—まず、ファッション事業で、海外で本当に成功していると言えるところは、ユニクロを含め、数えるくらいしかないのではないでしょうか。当然、海外志向の人も多くはないと思います。
 

クール・ジャパン戦略の海外支援は、主に企業の公募のもと選出されている。機構の支援についても、企業自らが海外案件を相談しにいく必要がある、つまり、企業が自ら声を上げなければいけないということだ。ファッション分野においても、日本のファッションを海外展開する必要性を感じない方も多いかもしれない。しかし、若者がこのような国の政策に興味を持つことで、日本のファッションの今後の可能性に大きな扉が開かれていく。好きでやまないファッション、日本のファッションが海外で広まること、日本のファッション業界がより盛り上がっていくことは望ましくないはずがない。
 

国の支援するクール・ジャパン戦略は、そのスケールのため遠い関係のないことのようにも思えるが、我々の身近に思いがけない良い影響を与えてくるかもしれない。
 

最後に今後、クール・ジャパンにどのような期待を若者は出来るかお聞きした。

 

小田切氏−クール・ジャパンに対して、若者が期待できることはあると思います。クール・ジャパンの主要な分野は、やはり、ファッションやアニメ・漫画などのコンテンツだと思います。これらの分野は、やはり、これからのクリエイター等も含めた若者たちこそが、これらの分野の新たな商品・サービスを生み出していく主役です。その主役たちに関連する商品・サービスを乗せることができるプラットフォームを海外に構築するための支援をすることが、クール・ジャパン関連の政策の本丸の一つです。そのため、今後、このような主役たちが日本だけでなく、海外で活躍できるフィールドが増える可能性が広がります。以上の観点から、クール・ジャパンに対して期待いただければと考えています。






小田切未来 (おだぎりみらい)
昭和57年1月19日生まれ。東京都出身。平成19年3月東京大学大学院公共政策学教育部経済政策コース修士課程修了。
同年4月に経済産業省入省。21年に経済産業政策局産業人材政策室総括係長に着任。平成23年に商務情報政策局生活文化創造産業課クール・ジャパン海外戦略室長補佐として”クール・ジャパンプロジェクト”を開始。


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