2012 S/S 東京コレクション気鋭のブランド
HISUI
「feeling of melting」
10月21日、belle salle渋谷FIRSTで行われたHISUI 2012SSコレクション。どこか懐かしさを感じるチェック、若々しいピンク、水彩画のような花柄、アシンメトリーなデザイン。柔らかい色使い、春の幸福につつまれた軽やかで華やかなショーは、二羽高次氏によるギターの弾き語りをバックに、終始のどかな風景を連想させる。しかし一方でランウェイには鉛のひまわりが咲き、ショーのラストを飾るドレスもまた、鉛でつくられている。そこには際立って現実的な重みが感じられた。東日本大震災から数ヶ月、私たちは常にことばにできない不安に駆られている。デザイナーの伊藤弘子氏は、そんな私たちの心情を「feeling of melting」と表現した。そして、放射能を出し尽くした物体として象徴される鉛と、ランウェイのバックに飾られた聖母マリアによって表される希望とを対比し、変化する現状へ光を差し伸べている。明るくのびやかなショーの背景に、社会的な要素を盛り込んで私たちに強く訴えかける。ファッションだけでなく、裏側のずしりと重いメッセージに今後も目が離せない。
text : TSUTIDA / photo : kenshiro
