Fashion, Collection

AKIKOAOKI 2020-21A/W Collection

 

  2月10日、ワールドの青山オフィスにてAKIKOAOKIの2020-21秋冬コレクションが発表された。今回のコレクションはショーの形式を取らず、ホールをモデルが自由に歩き回り、一定時間が経つと音楽とアナウンスが流れる、というインスタレーションによる発表となった。

 

 AKIKOAOKIの今回のテーマは、女性の在り方と男性の在り方という点にフォーカスした。デザイナーの青木氏は、「女性の性の在り方と男性の性の在り方について、お互いを性として対称にあるものとしてではなく、(女性が男性のように、女性が男性のように)こうなりたいという自分の性別の延長線上に捉えるようなジェンダーを意識した」と語る。今回、本ブランド初の男性モデルを起用したこともこのテーマに大きく寄与しており、ファッションにおける女性性、男性性という性の分断について言及し、この性の在り方はもっと自由でいいのではないか、という視点を提案している。

フェミニンに留まらないキリッとした強さを感じるキャメルのコートとパンツ。
女性らしいドレープの入ったワイドでゆったりとしたシルエットのドレスコート。

 昨年8月発表の“ユニフォームと民族衣装”をテーマとした2020春夏コレクションとはまたコンセプトのベクトルを変えてきたAKIKOAOKI。ファッションにおける性の在り方というテーマだけでなく、今回のコレクションでは初めて古着のリメイク品も加わっている。

 メンズの、レザーの組み合わせ方が複雑なディティールのパンツや、モデルが羽織るように着用しているドレスコートがそれである。ドレスコートは、トレンチコートを3、4着使ってリコンストラクションしたものだそうで、青木氏は「ちょっとシェイプがあったり、というように女性的なディティールを入れて、メンズのルックとして提案したい」とテーマとの関連も語った。

 

 また、今回古着のリメイクルックを取り入れたことは、現代の環境問題とファッションについて青木氏が考える要素も反映されている。青木氏は、今回のブランドとしての取り組みが“サステイナブル”と言うことは簡単にはできない、と前置きしたうえで、「今、物があふれている中で、古着という、過去で知らない人が着て、時間の経過やそれぞれのパーソナリティを超えてきている物を使ってもう一度リクリエイションするということは精神的にすごく健康な状態だと思った。それを新しい洋服と同じベクトルで着たり、向き合うのは、今の時代的にすごくいいんじゃないかな、と思う。」と独自の考えを語った。

 

 メイクは前回同様、RMKが担当し、女性モデル、男性モデル共に、鼻筋、頬骨、顎の上にメタリックなハイライトが入れられていた。洋服の素材感がコーデュロイやレザー、シアーなものなどと多様で、温かみのある素材や色を使っているのと対照的に、メイクはメカっぽい、人間味がないものになっている。一人一人のパーソナリティが違う、というのではなく、あくまで、ひとりの人間像の中にいろんなスタイルがある、ということを表現するため、メイクは敢えて無機質さと人間ぽくなさを敢えて入れているということだ。

 

 女性性、男性性の在り方というジェンダー的観点だけでなく、新しく古着リメイクのルックが登場し、トレンディで現代的な観点を多く盛り込んだ今回のコレクション。一面大理石のホールの中を行き来するフェミニンでありながらそれだけにとどまらない意思を感じるジャンパースカートやレザーのショートコート、雄々しくありながらAKIKOAOKIの持つ静謐さをきちんと持ち備えているメンズのドレスコートなど、ルックも空間全体までもが、冷静に挑戦的な美しさを持っていた。AKIKOAOKIのコレクションには毎回、力強い一本の芯を感じる。今回のコレクションではAKIKOAOKIの品のよいうつくしさはそのままに、新しい進化の一歩を踏み出したように感じた。

text : 望月青河

photography:photomaker

styling:Maki Kimura

jewerly:Preek

make up:RMK

hair:TONI&GUY

stage design:HYOTA