愛する人の視る世界
10月15日、PACIFIC ARTS AOYAMAMORIO’S STUDIOにてSTAIRの2020年春夏コレクションが発表された。
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SIGHT
誰もが同じ色で同じ世界を見ているとは限らない
その目に、なにがみえているのか
視界に溶け込み、見えないものを視る
曖昧で不完全であるものに美を見出し
感情の移ろいを色に託す
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今回のテーマは「視界」
大切な人の目に映る世界がどんな色でどんな形なのかは永遠に知ることができない。その視界を見てみたいというデザイナー・武笠の思いで製作されたコレクション。曖昧さを表現するため、グレーやベージュのトーンが多く使用されている。
ほとんどのテキスタイルがオリジナルだという今季のコレクション。中でも富士吉田市のほぐし織という織り方で製作された素材が目を引いた。花柄に色彩のノイズと見え隠れする雑音が幾何柄に表現されている。横糸を使わずにフリンジに加工されたアイテムも。繊細な儚さやとどめたい思いがテキスタイルに込められていた。
また表現違いの同柄や、素材違いの同色といったテクスチャーの違いが目立つ。リキッド感ある素材からパサパサとした麻の素材など、そこから多くの表情が見えてくる。
ポリエステルに転写プリントが施されたアイテムも印象的。感情に色を託すというテーマで、武笠の感情や色彩をそのままぶつけてペイントされた。
そして色といえばオレンジやネオンイエローが差し色として多く用いられ、テーマに合わせ曖昧な色相の中で映るビビットカラーが眩しく目に映る。
新しいシルエットでありながらもリアルクローズ。尚且つ着ることで高揚感が持てるようなアイテムとスタイリングで現代女性に寄り添う様子が魅力的だった。
Text/櫻田美羽
Photo/ 荘あかり