自分自身に向き合う
吉田圭佑が手掛ける「ケイスケヨシダ(KEISUKEYOSHIDA)」が2019A/Wコレクションのショーを渋谷ヒカリエにて開催した。
今シーズンは「自分自身に向き合うこと」を強く意識し、吉田氏が今本当に「カッコいい」と思えるものを追求した。
「ブランドとしてシーズンを重ね、色々な人に自分の姿を見られていく中で、『本当の自分とは何か』考えるようになった」と吉田氏は話す。そこで影響を与えたのは、学生時代の経験だ。吉田氏は小学生の時、カトリック系の学校に通い、日常的に礼拝をする場面があった。静かな子からやんちゃな子まで全員が静かに礼拝する時間は、「自分自身に向き合う時間」ではないかと感じたという。
「これまでの人生やコレクションを振り返ると、新鮮なものを追い求めていた。だからこそ、本質に向き合い、自分自身をさらけ出したい。同時に、純粋なファッションへの憧れを表現し、自分が今本当に『カッコいい』と思うものを堂々と作りたい。」
その思いはショーで体現化された。
ランウェイ上には、赤いフレームが置かれていた。これは自分自身の境界線を表しているという。モデル達はフレームの下の台に立った時、一時停止し、再び歩き出した。一瞬立ち止まることで、自分自身と向き合う時間を設けていた。
モデルは全員、頭に包帯を巻いて登場した。「自分自身を模索していく中で、自分の本質がなくなり、透明人間になってしまうのでないか。」と話す吉田氏。包帯は透明人間になる恐怖への抵抗を表しているという。
パワーショルダーや、トグルボタンがいくつも巻かれたパンツ。次から次へと、力強いルックが登場した。
「クリエイションをしていく中で、自分自身の葛藤にもがき続け、新しい自分を表現することができる。それはファッションの本質ではないか。ファッションそのものを模索しながら変えていきたい。」と吉田氏は語る。
原点復帰となった今回のコレクション。ケイスケヨシダの新たな幕開けを感じた。
Text / 川井恵
Photo / 光菅悠妃