Fashion, Interview, Student, Others

ユースファッショニスタへのインタビュー

来週からAmazon Fashion Week TOKYO 2019 A/Wが開催される。ショーそのものだけでなく、ショーを観覧しに集うファッショニスタたちのコーディネートも一つの見所だ。

昨年10月に開催されたAmazon Fashion Week TOKYO 2019 S/Sにひときわ目を引く若者がいた。次世代のファッショニスタとしてこれからの日本のファッション界を率いる存在になるであろうビリまゆさん。

Amazon Fashion Weekでも一目置かれたその若きファッショニスタは、まだ高校2年生だ。デザイナーを目指し高校進学と共に沖縄から上京してきた彼の、10代とは思えないほど成熟した価値観や、自身のファッションについての熱い想いを語っていただいた。

 

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—ファッションに興味を持ったきっかはなんだったんですか?

 

小学校二年生の時に急に太りはじめたんです。実家のおばあちゃんがたくさん食べさせてくれて。でも小学2年生のある日、親が新しく用意してくれた青いTシャツを着た時にいつもより痩せて見えて。自分で選んで服を買うとかはそれまでなかったんですけど、親が出す服を選んで着るだけで、錯覚を起こせることがわかったんです。そこから、白い服よりも暗めの服を着た方が痩せて見えることが小2ながらにわかって。

 

 

 

—最初は自分のスタイルをよく見せるために服を自分で選ぶところから始まったんですね。

 

そうです。そこからもっとファッションに興味を持ったのは、小5の時にテレビでBIGBANGのMVを見てからです。そのMVの衣装とか雰囲気作りに衝撃を受けて。普段は9時就寝なのに、その日は夜更かししてテレビを見てたんです。親も寝ていて自分一人で見ていたっていう環境もあって、よりその世界に強く引き込まれたんだと思います。今でもその瞬間の映像を鮮明に覚えてて。その日から、着痩せのためだけに服を着る自分ってどうなんだろうって思い始めました。ファッションは言葉にしなくてもできる自己表現の一つだってことを思い始めたのもその時です。それからBIGBANGの他のMVを見ていって、パンクな格好をしたら感情が荒れているってことや、テーラードがしっかりしたジャケットを着ると落ち着いている印象を与えられることを学んでいきましたね。もとから自分を前に出す性格ではなかったんですけど、服は自分のその時の感情を表せる方法だなって気づいてからは、そうやって自己表現するようになりました。あの日がなければ、ファッションに興味を持つことがなかったかもしれません。

 

 

 

—ビリまゆさんのお名前には眉毛が使われていますが、ご自身の眉毛に対しての想いはありますか?

 

眉毛は自分のアイデンティティであり、チャームポイントだと思ってます。中学校二年くらいまでは嫌いでコンプレックスだったんですけど、嫌いなところをあえて個性として出した方が武器になると思って、Twitterの名前に眉毛入れようって思ったんです。コンプレックスって、なんならさらけ出して、「文句ある?」くらいじゃないとつまんないなと思います。他にはない自分の個性になるものをダメにしてしまうのはもったいないなって。僕の場合は、眉毛が妙に綺麗に整っているとこがまた不思議なんですよね。好きでもあるけど、たまに嫌いになる時もあって。帽子とかのアクセサリーを使うと支障出る時があって難しいから(笑)。

 

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—同世代のファッショニスタの方々とはどのような交流があるのですか?

 

人によっては冷たいという印象を持たれるかも知れないんですけど、これからの自分に悪い影響を与える人とか、お互いに成長して還元しあえる仲じゃないと深く関わり合わないようにしてます。どんなに面白くても、常にネガティブな発言をしていたり、悪口がひどかったり、視野が狭すぎたりしている人とは少し距離を置くようにしていて。ビジョンが見えてて、今の自分が何をやるべきかわかってて、ネガティブな発言しない友達はやっぱり技術もあるし、人間性もあるから、周りからも評価されているんですよね。だからこそ、そういうのが彼らが周りから支持されている理由だと思います。過剰に周りに合わせ過ぎると自分を見失ってしまうからこそ、自分が本当に尊敬できる人たちでないと関わらないようにしています。僕の友達は絶対に夢を笑わないんです。僕が「月に行きたい。」って言っても「行けばいいじゃん。」って行ってくれる人たちばっかりで。そうやって友達たちが僕の夢を笑わないから、僕も自信を持ってその夢に向かって行けるんだと思います。

高校入学とともに東京で活躍しやすいように親元を離れて一人で上京したんですけど、そこから都会や芸能界の世界に足を踏み入れて、死ぬ気で行動して、今まで以上に直感を大事にするようになりました。直感で行動するからさらにその直感が磨かれていくし、逆にリスクのことばっかり考えると行ける道も行けなくなってしまうと思います。周りの友達は、そういう考えの人がおおいですね。

 

 

 

—服はどうやって選んでいるんですか?

 

僕が持ってる服の9割がヴィンテージで1万を超えるものは5着もないんです。まだ普通の高校生なんで(笑)。衝動買いは本当に良いものじゃないとしないって決めてます。お店で服を見ても「かわいいけど、これは僕が着たい服なのか、僕が作りたいデザインなのかな。」って考えて買うようにしてます。お店に行っても、デザインだけを盗んで、店員さんに「これはいつの時代のものですか?」って聞いたりして、その年代の服を調べたりして、デザインの参考にしています。

高1の時に服のリメイクをよくやっていました。シルエットにこだわりが強くて。MCMのジャケットのシルエットが長くてあまり好きじゃなかったから、ハイウエストくらいに切って、形に付けたら綺麗に見えるんじゃないかなってやってみました。

 

 

 

—ビリまゆさんのSNSを見ると、紫が多い時期や黒が多い時期などがあるんですが、気分と服には関係していますか?

 

無意識に自分の感情と服は平行していることが多いです。振り返ってみると、紫とかの原色ばっかりを着ている時は、インパクトと色で誤魔化して、本当の心を隠そうとしていたんだなと思います。黒、青、グレー、白、の時の方が、気分が落ち着いていて正直です。今は自分に自信があるから、必要な色は二色で十分で、その一つは黒でいいですね。

 

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—目指すデザイナー像はありますか?

 

自分の作る服から、固定観念をなくしたいと思っています。メンズでもヒール、ショート丈、ハイウエストとか。男でもスカートをかっこよく着れる人もいますよね。その人の好みは自由だから、性別に縛られることなんてなくていいと思うし。僕がブランドを立ち上げたら、ウィメンズのブランドに男性のモデルを起用したいですね。人の、着る側の観念を壊していきたいです。「こうやって着れるよ」っていう着方じゃなくて、服に対する概念を壊す。日常とかに目を向けて、コンビニの袋を持ってる若者も美しくドレスアップしてみたら、面白いんじゃないかなって思っています。ショーを商店街みたいにセットして、ランウェイをママチャリこいで走ってもらったりとか、人々の生活から概念を変えていきたいですね。

 

 

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—尊敬しているデザイナーはいますか?

 

ALEXANDER WANGを尊敬しています。彼のブランドは黒に縛ってるのに毎回新しいんですよね。僕にとって、黒の衝撃が大きかったブランドです。彼が過去にインスタグラムのストーリーでQ&Aをやっていて、ファンに「メンズとウィメンズはどうやって着ればいいですか?」っていう質問を受けていたことがあって、それに対して「自分が着たいものを着たい時に着るだけ。」って答えてたんです。僕もその言葉が本当にその通りで、服ってそれが当たり前だと思います。パーティーだからシャンパングラスで飲まなきゃいけないわけじゃなくて、紙コップでも良いわけで。男性用のコップ、女性用のコップなんてあるわけじゃないですよね。それは服に対しても同じことが言えると思っていて、シルエットには、確かに男性らしい、女性らしいってあるんですけど、男性らしく女性が着るというのも一つのスタイルだし、女性が一生女性らしくしなきゃいけないって言うのも違うと思ってます。

 

 

 

—同世代の若い人たちに服を通して伝えたいことはありますか?

 

自分を知ってほしいです、服を通して。自分は何が似合う、似合わない、ももちろん学んでほしいんですけど、「この服をたくさん着てるから、自分はこういう場所に行きがちなんだな。」とか。「こういう服の子たちが周りに多いから、自分はこういう趣味の人が合うのかな。」とか。自分の心理や、好きな環境を知ってほしいです。着ている中身は同じでも、見た目は全然違うわけじゃないですか。また紙コップの例えになるんですけど、入れ物が変わればその水の価値も変わりますよね。一つに固定される必要なんてどこにもないから。要するに、自分やファッションをよく知って、自分の価値を高めていってほしいです。満足しないでほしい、死ぬまで。発信ばっかりじゃなくて、自分をまず知ることも同じくらい重要だと思います。そうしないと発信もできないから。同世代の人は自分をよく知れていない人が多いと思うので。

 

 

—ありがとうございました。

 

 

 

SNSが生活の一部となった現在、ユースたちは自分のことを深く考える機会を奪われているのかもしれない。「人よりも固定概念があまりない僕から、誰かの考えるきっかけになればと思ってて。もし、僕になにかできることがあればって思っています。」と語るビリまゆさん。自分のやりたいことを誤魔化さず、夢を恥ずかしがらずに堂々と語れるビリまゆさんは、そのファッションだけではなく、彼の目標に向かう姿勢やその広い視野で、今のユースを引っ張っていく可能性に満ちていた。

 

 

ビリまゆさんSNSアカウント

Instagram @mayu_fancy

Twitter @mayu_fancy

 

Text / 荘あかり

Photo / 中村宜嗣