Fashion, Collection, Tokyo 2019 S/S

NEGLECT ADULT PATiENTS


BiSH、BiS(新生アイドル研究会)の仕掛人として知られ、音楽プロデューサー、実業家、作詞家、ファッションデザイナーである渡辺淳之介氏が手掛けたアパレルブランド、NEGLECT ADULT PATiENTSが東京コレクションに初登場した。渡辺氏は今の風潮や様々なスキャンダルについておかしいと考え、このご時世、病気の人が多いと感じた。子どものころに戻り自由でいれたらもっと楽しいと思い、今回「大人たちを「全員病気」」で設定しそれらを表現したいと思ったと言う。


「もはや現代、みんな病気。」をテーマに暗闇から放つライトから“歯医者で流れている音楽”をイメージさせたというオルゴール。誰もが知っているJ-POPを選曲しており聞きなれた名曲により緊張がほぐれる。
会場では、オルゴールと会場中に広がる声音。多くの観客が視線をステージ上に向けショーの始まりを待つ。
落ち着いた雰囲気から一変してアップテンポな曲が流れ、真っ赤なスポットライトからショーが始まった。ショーの発端を飾ったのはブランドロゴを堂々と記したパーカーを着た10人のモデルたち。同じ衣装を着たモデルが一斉にランウェイに登場し、渡辺氏の今回のショーに対する世界観が感じとれる出発点であった。観客の視線は一斉にステージ上に向けられ、私は今まで体験したことのない震えが身体全身にはしる。
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初めての発表とはいえ、堂々とNEGLECT ADULT PATIENTSの世界観を最大限に表現された今回のショー。「Sick」や「Patient」、「thinner play」など過激な言葉でデザインされたものも見られ、“子どもだったらセックスの意味を間違えるであろう。”とSをCに置き換えCEXと表現され、中には「X←X」と意味深なものも見受けられたがひとつひとつ言葉の意味は何だろうと考えてしまうほどNEGLECTの世界観に引き込まれていた。
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また、ランウェイ中に上下ジャージ姿でエアソールのサンダルを履き焼きそばをこれでもかと口に詰め込むモデルに肉まんをくわえた状態で歩くモデル。患者衣をまとった車いすに乗るモデルと点滴スタンドを押し、患者をイメージしたモデルたちが次々に登場した。モデルたちの表情からはどこか寂し気な表情。また、乱れた髪と具合の悪そうなメイクを施しダルそうな態度から日常生活の怠りを表現しているようにも見えた。
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最後は渡辺氏本人の登場で観客がざわめく。彼の挨拶でショーの幕が閉じ、NEGLECT ADULT PATiENTSに対する彼の誠意がその挨拶により伝わった。

誰しも世の風潮に抵抗し難いもの。その時々の時代の流れや情報、トレンドの中で私たちは生活している。次々に生み出される風潮に流されそれが普通であるという考えは非常につまらない。自らの言葉で発信し世の人々が共感してくれる。それは彼にとっても勇気につながるのではないだろうか。

Text / 光菅悠妃