日本人なら一度は耳にしたことのある言葉、ジャポニズム。
日本文化が西洋を中心に海外で高く評価され、あらゆる分野で積極的に取り入れられたことだ。
しかし、そのジャポニズムが西洋でブームとなる以前、西洋に衝撃を与え、
東洋に対する期待と関心を高揚させた存在”シノワズリ”については、日本であまり知られていない。
シノワズリ。西洋「から」見たアジアの大国・中国の世界。
アジア特有の絢爛な色づかいと、ヨーロッパがそれに対して抱いた幻想とが
織りなして出来上がった。
Fashion Press より引用
それは太古から中国と関わり合ってきた日本では決して生み出せなかった。
近くにいるからこそ、見えない面がある。
本物を知らないからこそ、想像に導かれて描ける姿がある。
18世紀のヨーロッパの人が見たその世界は、日本人から見たそれよりもはるかに鮮やかで魅惑的であった。
Fashion Press より引用
市民革命の最中で、人が、街が、世界が、揺れていた時代だったからこそ生まれた新しい形。
強烈な色づかい、大胆なパターンが好まれたのには、当時の人々の心情が深く関わっている。
異国に夢を馳せた人々が見た幻想は、簡単に情報にアクセスし、
真実を知ることのできる現代の私たちを刺激し、飲み込んでしまう。
Vogue JAPAN より引用
18世紀のヨーロッパの人々が出会った強い衝撃、体にこみ上げる熱、
未知のものへの憧憬、そして、それらが混ざって生まれた“異質”なもの同士の交わり。
過去に行くことはできないが、その時誕生したカルチャーによって、
その時代しか生み出せない空気を感じることができる。
シノワズリは私たちに動乱の記憶を、異文化の衝突を伝えてくれる存在である。
Text / 荘あかり