Fashion, Collection, Tokyo 2019 S/S

MURRAL 19S/S Collection


新たなMURRALが生まれた日


MURRALの2019年春夏コレクションが10月19日、マンサード代官山にて発表された。
前シーズンにショーを行わなかったMURRAL。
この半年間で改めてブランドのコンセプチュアルな部分や世界観について考える良いタイミングになったのだそう。
これまでのラッフルやフリルなどを無くし甘さを排除し「毒ヘルシー」をキーワードに新しいMURRALが生まれたコレクションとなった。
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「周りから”MURRALは毒っぽいイメージがあるよね”とよく言われていたんです。ブランドイメージをお客さんに持ってもらうのは嬉しいことだったのですが年々そのイメージに縛られ過ぎて本当に自分たちがやりたいことは何かと疑問に思ったんです。そこで改めてブランドの方向性について話し合いました。」とデザイナーの村松氏と関口氏は話す。
故に今季の始まりはブランドを変えたいという思いからスタート。

グスタフ・クリムトの『接吻』。この絵画がMURRALのフィルターを通され、新作コレクションに落とし込まれた。


Google Art & Culture より引用

金箔を使った絵画であることからゴールドがキーカラーに。
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またオリジナルのレースを使ったアイテムたちが特徴的だった。
ブルーとブラックのレースには唐草模様や小花、大ぶりの花、スカラップと四層に渡って上から下に流れるようなデザインが施され、繊細で少し大人なデザインに魅力を感じる。
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今季はMURRALの毒っぽさを残しつつも、鮮やかな色彩のアイテムたちが多く見られ,モデルに施されたメイクにも色が多く取り入れられ”春夏コレクション”という言葉がよく似合っていた。

また、これまでは毎シーズン暗幕や黒い床に囲まれた空間でショーが行われていたのだが、今回は一面真っ白な空間が会場として選ばれた点からも、ブランドがアップデートされたことが影響しているような印象を受けた。
そして、他ブランドとのショーとは会場全体の一体感に少し相違点があるように感じた。フロントロウにはMURRALのアイテムを身にまとった女性がずらっと並んでいる姿が目立ったのだ。一部の参加者がブランドアイテムを身につけている光景はよくあるがここまで揃うのは他では見ない光景で清々しかった。
他にも、ショーの最後にランウェイに登場したデザイナーの二人が目に涙を浮かばせながらお辞儀をする姿が強く印象に残った瞬間だ。半年間にわたるリブランディングへの思いがグッと込み上げたのだろう。
その場面では拍手が長く続き、ショー終了後も会場は参加者で溢れ賑やかだった。

以前の渋谷ヒカリエでのショーは招待者以外の一般応募客も多かったが、今回は渋谷ヒカリエから離れあえて小さな会場でコレクション発表を行うことで限られた招待客のみが参加することになった為、会場の雰囲気はどこかアットホームでMURRALが多くの人に深く愛されているブランドだとより感じることができたのだ。
いい意味で期待を裏切ることになった新作コレクション。ブランドが新たなスタートを切る瞬間を見届けることができ、私まで幸せな気持ちになった。


会場を出ると、外は小雨が降り陽が沈み生憎の天気だったが、会場内にはまだキラキラとしたエネルギーが閉じ込められまるで別世界のようだった。
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Text・Photo/櫻田美羽