MURRAL 2018S/S Collection

 
 東京コレクション最終日、ヒカリエホールBにてMURRAL(ミューラル)の2018年s/sコレクションが発表された。インビテーションには「SONATA」の文字。今季はベートーヴェンの「月光ソナタ」からインスピレーションを受けたそうだ。

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今回のテーマは、ベートーヴェンが失恋した相手に向けて作曲したとされる月光ソナタより「叶わなかった恋」。特徴的な割れた鏡のメイクアップは失恋で割れた心を表現した。また前半のルックで施された花の刺繍をよく見てみると可愛らしいというよりも、どこか棘があるような鋭角な花びらを散りばめている。これは月下美人という種で、夜にしか咲かないという神秘的な特徴を持つ。

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中でも今回印象的だったのは角度によって見せる色が変化する素材。縦糸と横糸を異なる色で組み合わせ、中にフィラメントを入れることで光の反射によって表情を変えている。何色なのかわからないミステリアスさとともに、はっきりとはわからない心の不安定さを見せているようにも思えた。

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この月光ソナタがクライマックスに向けて激しさを増しそれまでのソナタ進行を大きく覆したように、これまでのMURRALを崩したいという思いがあった、と村松氏は語る。ブランド独特の毒々しさを残しつつ、フィナーレは光沢感のある素材やカッティングを取り入れ春夏の軽さを演出した。

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「ああ本当に素敵…」モデルが目の前を歩く中、何度思ったことだろう。本来ならば我々人間は失恋や憂鬱などできれば経験せずに、希望に満ちた日常を過ごしたいと望むものだ。だが悲観的な感情にスポットを当て、その感情でさえも欲しいと思わせてしまうのがMURRALの力だ。綺麗なもの、正しいもの、前向きなものだけに魂は宿るのではない。辛く、苦しい記憶も色褪せれば取り戻せないかけがえのないものへと変化する。まさに「様々な日常に彩りを」与えてくれたMURRALのコレクションであった。


Text/須藤 志央里
Photo / 田近 咲菜 (@is__sleeping)


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