東京コレクション初参加の2人がリアルに生み出す、極上の幻想とクチュール。
テーマは「PLUMAGE(羽)」、’束縛から解放する’ の象徴。
渋谷ヒカリエホールBにて、今季が初参加となるVIVIANO SUEとIIMISAによる合同ショーが行われた。それぞれがアバンギャルドなデザイン、こだわりのフェザーアイテムに表現し続けてきた自然美を軸にして ’鳥の巣立ち’ というイメージを用いながら映像や演出効果で積極的に形成された世界観に、ファッションショーそのものへの気合いを体感した。
会場奥には薄い布が重なり合って掛けられていて、スタート5分前になるとゴン、ゴンと一定の短間隔で鐘の音のようなものが鳴り始めた。ショーの最初と最後に投影された巣立つ鳥をイメージした映像は生々しく狂気的だが、決して悲観的ではなく、「自由」に向かう前向きな意志を持った力強さが感じられる。ランウェイの奥から焚かれたスモークと共にルックやショー全体を一際強調するものだった。
ファッションショーの主役は、服。そこでどのように演出すれば1番服を際立たせることができるか、答えはひとつとしてなく、定義するのは非常に難しいことだろう。だが、このショーが持つ恐怖を伴うほどの完璧な異世界は、客席の私たちに極上の幻想を、そしてクチュールを魅せてくれたと思う。服を魅力的にアピールするためのアトラクション的要素こそ、ファッションショーの醍醐味である。
ダークで圧倒的な雰囲気のショーとは裏腹に、囲み取材での2人のデザイナーは共に親しみやすく人懐っこい印象。近頃は敬遠されることが多いリアルファーをふんだんに使ったことに関しては「普段使われない、捨てられてしまう部分をリサイクルのような形で使用している」と話し、生命に対する尊重、感謝の気持ちを表した。自然に寄り添いながらストイックに服作りに取り組む2人にはむしろ好感を得ると同時に、今季以降どんな作品を見せてくれるのか楽しみである。
Text/上田早織
Photo/加藤華椰