Fashion, Interview

MY KIND OF NEW YORK CITY

MY KIND OF NEW YORK CITY
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photo:Han Wang

 

 

ニューヨークでファッションの道を歩むひとりの日本人女性がいる。アンビサス玲子さん。彼女はパーソンズでファッションを学びながら、ISSEY MIYAKE USAでインターンシップをしている。大人になった今、しかもニューヨークという土地で、歩んでいる彼女の道は特殊とも思える。そこで彼女の考えを知るべく、私たちはインタビューしてみた。

―――まず、留学しようと思ったきっかけを教えて下さい。

私がニューヨークに来たのには、一般的な留学生とは異なる経緯があります。
2013年、ニューヨーク出身の彼(最近夫になりました)に東京で出会ったのが私の人生における最も大きな転機でした。その頃私は一般企業の人事部門に勤める会社員でしたが、彼の帰国した数ヶ月後にニューヨークを訪ね、彼と相談しながら渡米を決めました。何度か遊びに来たことはあったこの街を「新しい自分の街」と想定して歩いてみて、ここで彼と暮らしながら、私の新しい人生を始めてみよう、と。
会社を辞めて、学生ビザをとって、あっという間の決断でした。その中で、以前人事として勤めたファッションの業界に、改めて今度は人事としてではなくビジネスの根幹に関わる部分で仕事をしたいと思い、ニューヨークに来て半年後にパーソンズへアプリケーションを送り、合格通知をもらいました。

―――留学することで何かご自身について大きく変わったことはありますか。

前述の通り、大学卒業後数年会社勤めをしていて、そこから先のキャリアについても悩んでいた時期だったので、30歳を目前にしたこの大きな決断は勇気と強い意志がなければできなかったと思います。
幼少期をイギリスで過ごし英語には自信はありましたが、私の場合は語学留学ではなく将来に直結する分野での研究をしたかったので、現地で様々な学校のオープンハウスや資料請求を通して自分の進みたい道をリサーチしました。
それまでアメリカでの進学は考えたことがなかったのですが、ニューヨークというおそらく世界で最も多様性の溢れる街での学生生活において、当初の決意を忘れないことと自分らしさを保つことを常に意識するようになりました。

―――インターンシップ終了後の目標は何ですか。

ニューヨークは、世界4大ファッションウィークの一つも行われるファッションの中心地の一つ。その中でも、ロンドン、ミラノ、パリに比べると、ビジネスに重きをおいたファッション ブランドやデザイナーが成功をおさめている都市です。
この土地で、インターンシップを通してブランドの成長を見届けることができるのは何よりエキサイティングな体験。そこから更に発展して、確かな技術やオリジナリティのあるブランドの市場をより広めていく活動にビジネスの部分から携われたら、と強く希望しています

―――海外でインターンシップをすることの日本にはない魅力があれば教えて下さい。

アメリカは日本よりインターンシップが広く普及していて、どの業界においても大学生・大学院生はインターンシップをすることが求められています。単位をインターンシップからとることも多いです。
特にファッションの業界のように、少ない人数で大きなビジネスを動かすことが多い世界では、インターンシップで企業側も学生側もベネフィットが多いというのが特徴です。人手が足りていない企業側はとにかく優秀なインターンを欲しがりますが、そこでただの雑用係に成り下がらず、可能な限り多くのことに関わりそこから学びと経験を得ることが、学生側にとって最も重要だと思います。アメリカはそういった自主性を尊重する文化が根本からしっかりしているので、自分から発言し関わっていく積極性と勇気によって、限られた期間のインターンシップをより有意義にすることができると思います。

―――インターンシップで一番身になったことは何でしたか。

ファッションのビジネスは、規模は大きいですが、実はとても古典的なビジネスの一つ。デザインと型紙があって、商品が生産され、販売チャネルを通して消費者に届く。その一方で、流行に影響されやすく、近い将来もなかなか予測しづらいのも現実です。その醍醐味はインターンシップを通して身をもって感じるのが手っ取り早く、そして効果的。

そして、ファッション業界は、大きく分けて秋冬シーズン、春夏シーズンに分かれており、各ブランドがコレクションを発表します。更に、最近はリゾート コレクションやホリデー コレクションといった中間のシーズンも拡大の一途をたどっています。コレクションの発表には1年以上の時間をかけてデザイン チームやプロダクション チームが動いており、それが発表された後、マーケットが動き始め、実際に店頭に商品として並ぶのはその約半年後です。そういったサイクルは授業でも勉強しますが、実際にインターンシップを通してリアルに体験することが、何より業界に慣れる一番の方法だと思います。

―――ISSEY MIYAKE USAをインターンシップ先に選んだ理由は何でしたか。

私の場合はアメリカ人と結婚をしていて、おそらくニューヨークに永住するという仮定が大きい上での将来設計が必要でした。となると、もちろんニューヨークならではのキャリアを築きたいと共に、日本との繋がりは残しておきたいという気持ちが日に日に強くなっていきました。

ISSEY MIYAKE USAは日本発のグローバルなブランドで、1980年代からニューヨークに存在し、常に進化を続けています。日本独自の伝統と革新性を持ったこのブランドが、更に北米市場で拡大していく上で、私もそれに関わりたいと思ったのが大きな理由です。

環境は完全にインターナショナルで、ISSEY MIYAKE USAの本社には日本人は数名、あとはアメリカ人とその他ヨーロッパ系の人種も多いです。何か特定の文化で決めつけることはなく、オフィスとしての空気をそれぞれの個性で作り上げている様子が、ロンドンと東京で育ち、アメリカ人と結婚したややごちゃまぜな背景がある私にとっても非常に働きやすいです。

 

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photo:Han Wang

―――ファッションの道に進もうと思ったきっかけはありますか。

日本語にある「衣食住」という考えは、実は英語でも共通していて、”food, shelter, and clothing” と言われます。 その中でも「衣」(clothing)の部分は、生きていく上で必要不可欠な要素である一方で、自己表現やアートとしても捉えられる、非常に興味深い分野です。

ファッションの市場は多様性を極め、ファストファッションからオートクチュールまで、幅広い選択肢があります。更には、ファストファッションのお店が高級ブランドの並ぶストリートに進出するという、クロスオーバーも多く見られるのが現状。

身を包む必要不可欠なものでありつつも、ここまで拡大し、境界線ももはやあまりなくなっているこのマーケットは、私にとっては「服が好き」「バッグが好き」「靴が好き」といった範囲を超え、もっと根本から関わっていきたいと思わせる魅力があります。

―――東京とニューヨークでファッションに対しての価値観の違いがあれば教えて下さい。

ニューヨークの人たちは、それぞれの生活や人柄、更には育った環境に至るまで、ファッションに表れていると思います。東京もファッション キャピタルと呼ばれるほどファッションの感度が高い街だと思いますが、服装を見ただけでその人のことまでわかるような現象は、ニューヨークに比べると少ない気がします。

例えば日本で、上品なブラウスと優しい色合いのスカート、エナメルのパンプスとブランドのバッグを持っていたら、女子大生かOLか、見分けがつかないような。一方でニューヨークでは、それぞれが好きなもの、都合がいいもの、行き先に合わせたものをはっきり選ぶので、その人の趣向、生活やその日の予定、仕事などがもっと垣間見える気がします。

「衣食住」の一つであると同時に、自己表現の場でもあるというファッションの性質がより感じられます。

―――海外と日本のファッション教育の違いは何だと思いますか。

私は日本では経営学で学位をとっており、ファッションを専門に学ぶのはパーソンズが初めてです。そのため直接的な比較はできませんが、パーソンズのファッション マーケティングの学科では、何よりグループ ワークの重視が特徴的だと思います。ファッションのビジネスにおける部分では常にチームで動くことが多いので、それを身をもって学ばせる姿勢があります。

また、プレゼンテーションも多く、更にはその方法も、パワーポイント、ビデオ、ムードボード等それぞれの手法を学生達が選択し組み合わせていき、いかに効果的に自分たちのアイデアを見せるかという部分から考える機会が多いです。オリジナリティを尊重し合ってそれぞれで発表し合い、発表後は質問が飛び交うので、他の学生から学ぶことも多くあり有意義です。

―――ニューヨーク パーソンズでの環境にカルチャーショック等はありましたか。

世界中から学生が集まる学校なので、常に新しい文化に触れるような毎日で、1年もするとカルチャーショックも感じなくなり今では正直感覚が薄れてしまっています。これからいらっしゃる学生も最初は様々な文化に慣れないことも多いと思いますが、すぐにそれが普通になります。

しかしその一方で忘れてはいけないのは、自分自身も日本という独特の文化要素を多く持った国の出身であるということです。自分の行動や考えが周りの学生にカルチャーショックを与えている可能性も高い。

クラスメイトのほとんどが違う文化の出身であることを尊重し、自分の当たり前が当たり前じゃないことも常に頭のどこかで意識していると、お互いがカルチャーショックもショックと感じなくなります。

―――異国の地で勉学とインターンシップを両立させることは容易ではないと思いますが、その点において一番苦労されたことを教えて下さい。

何より時間の管理です。先ほども話しましたが、ファッションの業界は独自のカレンダーの上でサイクルが回っていて、それは必ずしも学生のカレンダーと一致しません。アメリカの大学は年に2学期が一般的で、夏休みや冬休みは長い分、学期中はかなりインテンシブな内容になります。中間や期末の時期は、テストやプロジェクト、プレゼンテーションが重なり、寝る時間を削って準備に勤しむ必要がどうしても出てきます。その上にインターンシップにおいてもマーケットの時期が重なったりすると、学生にも関わらず超多忙な週が続くことも。

自分で前もって計画をたて、できることから早めに準備をしておくこと。そして出来ないことはぎりぎりまで待たずに早めにそれをしかるべき人に相談することが重要です。アメリカの大学は期限に厳しいですが、その分、相当の理由に関しては配慮もあります。自身での管理をしっかりすることが、責任を持つことに繋がります。

―――最後にアパレル ブランドのインターンシップを考えている人に対してのアドバイス等がありましたらお願いします。

受け身でいてはなかなか中心が見えにくい世界です。自ら気づき、調べ、動き、発言することを好きになってください。ずっとおもしろみが増します。

◻︎今回のインタビューは、留学・語学教育事業を世界50カ国で展開するイー・エフ・エデュケーション・ファースト(EF)のご紹介で実現いたしました。
アパレルで活躍していく上での海外での重要性という点で今回このような企画を実現できましたことを編集部一同厚く御礼申し上げます。

<プロフィール> アンビザス 玲子

ロンドン経由の東京育ち。2013年よりニューヨークでの生活を始める。現在はParsonsでファッション マーケティングを専攻する大人の学生。アメリカ人の夫と飼い猫のPetticoatと、刺激の多いニューヨークで穏やかな暮らしを送っている。フリーランス ライターとして多数ウェブマガジンにも執筆中。

 

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<EF Education First>

1965年に、Education First『教育を第一に』をモットーにスウェーデンで設立した、イー・エフ・エデュケーション・ファーストは、世界最大級の私立教育機関。現在では世界53ヵ国以上の国々に500を超える事業拠点、及び、直営語学学校を擁し、グローバルに教育事業を展開している。同社は、言語教育、留学、オンライン英語学習、ビジネススクールなど、さまざまなプログラムを提供している。また、2016年リオデジャネイロ・オリンピックおよびパラリンピックの公式語学サプライヤーにも認定されている。

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