それはまるで、メディアへの挑戦!? ショーのキーワードは「時間」と「見え方」。
12/11(土)天王洲アイルの寺田倉庫にて早稲田大学繊維研究会のファッションショー「いま・ここ」が開催された。
ショーは会場内を複数のモデルが同時に動き回り、一度でその全てのルックを捉えることはほぼ不可能。おそらく全てのルックをじっくりと見ることができた人はいないだろう。壁にはプロジェクターでショーの様子が終始映し出されており、ルックが一通り出終わると映像が逆再生し、会場にはモデルが再登場。過ぎてしまった時間を一度だけ戻す演出が行われた。また、モデル達は各々花を持って登場しており、会場内にも枯れた花と生き生きした花が設置されていた。今回は「時間」がメインのテーマとなっているようだ。
また、ショーが始まる前に一部のルックがパンフレット方式で手渡された。これからショーが始まるのにそれを見せてしまうのか!?とは思ったが、これもあるメッセージが込められているのではないだろうか。「パンフレット内の写真のルック」、「ショー中の画像」、「壁の映像」、そのどれもが写しているものは同じだが、見え方は違っていたりする。つまり、「見え方」というのはその時々によって違っており、見る者や何を通して見るかによっても違う。だからこそ、写真・映像・ショーの実物と3つの見せ方をしていたのではないだろうか。併せて、枯れた花や逆再生などを使って「時間」を表現していたように思える。「見え方」と「時間」の関係をショーというたった一回の一瞬に込めたギミックに感心してしまう作りになっていた。
とは書いているものの、これはとある個人の見方であり、正解ではないだろう。メディア(我々も含めて)も写真や動画、文章でその場の事実を伝えようとはしているものの、それも数人、あるいは個人の「その時のひとつの見え方」に過ぎない。このショーは写真・映像・ショーの実物の3つを自身の目で見ないことには意味を成さないようなので、我々メディアがいくら写真などを用意してもこのショーの醍醐味を全て伝えることは不可能である。そこには「生のショーの見え方」が抜けているからだ。これはまるでメディアへの挑戦か!?とも思ったが、今回でいうと生のショー・写真・動画などの色々なものを自分の目で見て、自分で答えを判断することが大事というメッセージも感じ取れる。
しかしこれも、私個人のひとつの見え方に過ぎないのだが…。
Text/藤田海斗
Photo/髙木千恵・永山洋
【早稲田大学繊維研究会/sen-i】
早稲田大学繊維研究会は、1949年創立の早稲田大学の学生を中心としたファッションサークル。2014年度より、理論と実践の両面からの衣服づくりを目指して活動している。「方法」そのものを主題化しながら、衣服の制作を行い、ファッションショーやインスタレーションを通じて、自己言及的に「ファッション」および「衣服」への問いを提示している。OB,OGにはアンリアレイジの森永氏やフォトグラファーのシトウレイらがいる。
【web site】
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