主役が『服』の演出?
2016年10月20日、ヒカリエホールAにてAnne Sofie Madsen(アンソフィーマドセン)2017年春夏コレクションが発表された。今回のテーマは“失敗”。デザイナーのアン自身を含む、人間であれば誰しもがしてきた“失敗”。また失敗から得る“成功”をコレクションに反映させている。
ランウェイが広く取られた会場内は至ってシンプルであったが、その分発表されるコレクション自体への期待度が高まった。ファーストルックはブラックから始まり、主にブラックとベージュでコレクションは構成されていた。登場するルックはそれぞれ全く違った印象であり、ビジネススーツのようなものや、ロックスターを連想させるもの。エナメルのタイトでクールなもの、シフォンを使ったドレッシーでグラマラスなものなど、1点ずつに‘サブタイトル,のようなものがあったのではないかと想像させる。
そして今回のコレクションから感じたことは、アンにとっての失敗は決してネガティブなものではないということ。彼女にとっての失敗とはユニークでチャーミングなもの、そして新しいものを創るための大切なヒントになり得るのだろう。
人はみなパーフェクトを求めるが、“失敗”をすること、つまり様々な経験を重ねることによって、面白いものになっていく。つまり今回のコレクションは、アンのデザインやビジネスに関する失敗から、自然と生れたものではないだろうか。
Anne Sofie Madsenのショーから個人的に感じることがあった。それは演出についてである。ファッションウィーク中、連日多くのショーをみているが、このようにシンプルで、服だけで魅せてくれるショーは数少ない。ブランドは各々に、モデルや映像、音楽、照明、セットそれぞれに趣向を凝らせ、中には生演奏や、ダンスパフォーマンスを通して、コレクションの世界観の中に私たちを連れて行ってくれる。もちろんそれらは我々を楽しませ、コレクションへの理解をより一層深めてくれる。がしかし、最近では行き過ぎた演出も見受けられるのではないだろうか。というのはつまり、演出が過剰で服よりそちらに目が行ってしまうようなショーである。もちろんショーならではの良さを感じられるのは演出によるものが大きいし、ブランドによっては今回のショーではとにかく話題を集めたい。そんなこともあるだろうと思うので一概に言えることではないが、やはり主役は服なのではないだろうかと私は個人的に考えている。そのショーによって、ブランド・デザイナーが1番に魅せたいもの・伝えたいことは何なのか。その時のショーでブランドがアピールしたい部分を、我々がショー見るだけで伝わってくる。そんなショーが増えると良いのではないだろうか。
text/浜崎真実
photo/angie