その人「らしさ」とは?デザイナー大塩氏の「らしさ」のルーツ。
今回は印象派のフランス画家であるモネから着想を得て、モネの「まぶたに映る一瞬の光を写そうとした」という言葉通り、ルックはぼんやりとしたイメージで撮影されている。それゆえ、今まではタイトなシルエットが多かったコレクションに、ぼんやりとしたイメージをシルエットで具現化したビッグシルエットのアイテムが目立つ。モネをテーマにしようとしていた制作期間中、モネの作品などを見に行こうと思っていた矢先にフランスでテロが発生し、渡航が不可能になってしまったというデザイナー大塩氏。そこで今回は「反戦」もテーマに組み込み、グラフィックに反映。同じく反戦の意思を持つオノ・ヨーコの言葉などを引用している。従来よりもビッグシルエットを多く取り入れたり、ハットのアイテム数を減らすなどブランド自体に大きな変化が見られる今回であったが、そこにはブランドらしさ、デザイナー大塩純平らしさが残っていた。今回、その理由を彼のルーツと共に伺わせていただいた。
ーーー今回はけっこう今までと違ってコレクションの印象がかなり変わりましたね。でもなんとなく「らしさ」は残っている印象です。なぜ変えようと思ったのでしょうか?
かなりアイテムのバリエーションを増やしました。シャツから始まったブランドなのですが、今回はイメージを一新しようと思って微塵も残さずイメージを変えたつもりでした。でも、その中にはやっぱり自分らしさというものがあったのだなと再認識した感じですね。こういうのがブランドらしさになっていくのかなと。ロックっぽいなどと言われると、そういうくくりに収まってしまいそうで嫌だったので、変えようとした部分はありましたね。
ーーー「らしさ」が意図せずに出てくるのってすごく良いですね。
モネの「色に一日中取り憑かれている」という言葉があるんですが、僕は「洋服に一日中取り憑かれている」んです。本当にいつも服のことばかり考えていて、作っている間もやっぱり楽しいですね。今回は90年代に流行ったロンTに半袖の重ね着などをルックにしています。あの時かっこよかったもの、僕の好きだったものが今回は詰まっている感じですかね。
ーーー自分にファッション観が芽生えたな、というのは今考えるといつ頃でしょうか?
小学生2年の頃ですかね。小学生って普通は親に服を選ばれて、洗濯されて、毎週周ってくるものを着るみたいな感じじゃないですか。でも僕はたまたま近所に友達のお姉ちゃんがいて、ピンクのポロシャツのお古をもらうこなんかがあったんです。ピンク色でレディースなので右前だし、親はあまり着せたくなかったみたいですけど、自分で進んで着たいと思っていました。それぐらいの時からですかかね。無意識的に人と違うことが良かったんだと思います。ジーパンとかも自分で買いにいっていましたね。その時はそれがなぜかは分からなかったんですけど、「モテたかった」っていうのが大きかったですかね(笑)。そうやって奇抜な服とかを集めていたらいつの間にかもっとモテない方向に。
ーーーそういう経験が今の自分らしさになっているのでしょうね。
そうだと思います。周りのブランドさんにもけっこう自分「らしさ」があるのではといわれます。でもそこから抜け出せなくなるかもっていう不安もありますね。
前回同様「寒いのも、暑いのも、重おいのも、痛いのも嫌なので、そいう部分は全部省いています。(笑)」と語る大塩氏。裏地をしっかり施したり、コートでも厚みがしっかりあるのにウールはより軽い物を使ってライトにしたりと人間的な部分が染み込んだ作品を作っている。その人間味が大塩氏の変わらない「らしさ」に繋がっているのではないだろうか。
text/Kaito Fujita
photo/angie
look photo/松下 知之