Fashion, Collection, Tokyo 2020 S/S

WISHARAWISH 2020S/S Collection

 

Post-Wore Delicacies

 

10月18日、渋谷ヒカリエで、WISHARAWISHの2020年春夏のコレクションが発表された。 

 

今年3月のAmazon Fashion week Tokyo Fall/Winterで日本でのコレクションデビューを果たしたタイ発祥のブランド『WISHARAWISH(ウィシャラウィッシュ)』。今回のRakuten Fashion Week Tokyo Spring/Summer 2020では、「社会というフレームの中でも、個人の自由な発想に対して皆が尊敬していける世界」を表現した“Post-Wore Delicacies”を発表した。

 

WISHARAWISHはタイのあらゆる地方の様々な伝統工芸を、現代的なデザインのコレクションを通して世の中に認知させることをコンセプトとしており、本コレクションでは、伝統的な手法や環境に優しい生地作りを行っている、タイ各地の12人の職人たちと共に製作に挑んだ。

 

デザイナーのウィシャラウィッシュ・アカラサンティック氏は、今回のコレクションについて、「タイのテキスタイルの伝統を守り、外に出していきたい」と語っており、実際、コレクションの80%が職人とスタッフによる自主製作で、伝統のテキスタイルを全面的に活かしている。

 

例えば、12人の職人のうちの一つ、タイ南部クラビ県の生地屋『タイバティック』によって作られるのは、バティック生地という生地。

 

 

カラフルな配色で、クラビ県の昔の生活様式や文化、自然の景色などが全て職人たちの手によって描かれている。中には、3000年前に描かれた絵画や、5000年前の布の柄を象徴した模様を描き起こしたものもあり、タイの伝統工芸を広めるコンセプトを持つブランドらしいアイデンティティが現れている。

 

多くがこのようなシルク生地で製作されていて、その春夏らしい軽やかさが美しい。

  

 

ロング丈のドレス。生地が軽やかに波打ち、その揺れは唯一無二の伝統のシルクの物語を語る。

 

また、今回のコレクションで特に目を引いたのは、ボンネットを被り鉢巻を巻くモデルたちである。

 

 

斬新で新鮮なルックは、自由でボヘミアンなコンセプトを体現しており、本コレクションのテーマの「個人の自由な発想」という部分が大きく反映されている。

 

 

このボンネットや鉢巻は、タイの伝統文化を現代のファッションに落とし込んで表現している一方、タイ発祥のWISHARAWISHらしい自由な発想や自由な表現、すなわちフリーマインド、フリースピリットというメッセージを世間に向けて発信してもいる。

 

メンズライクというよりは、ノンジェンダーを目指したという本コレクションでは、形にブランドらしいこだわりは見られるが、シンプルかつベーシックなルックが多い。しかし、そのひとつひとつのテキスタイルがタイの伝統工芸によって作られたもので、すべてのルックを他の誰にも生み出せない唯一にしている。デザイナーの母国の伝統技術をフルに活用し、現代ファッションと融合させていく、ブランドWISHARAWISH。今後のコレクションに期待が高まる。

text/望月 青河

photo/越智 柚月