KNOCK OUT YOUR FAKES:ACUODが魅せた「本物」
デザイナーの李燦雨(チャヌ)が手掛ける「アクオド バイ チャヌ(ACUOD by CHANU)の2019A/Wコレクションのショーが渋谷ヒカリエにて行われた。
今シーズンのテーマは「KNOCK OUT YOUR FAKES」。
フェイクニュース、フェイク広告など、現代には様々なフェイクが溢れている。しかし、ブランドのベースとなっているヒップホップカルチャーの一つであるサンプリングや、現代アートのコラージュなど、既存のものを繋ぎ合わせて新たなクリエイティブへと昇華しているものもある。
リアルとフェイクの境界線について考えた今回。本物と偽物、コピーと創造の違いは何処にあるのか?アクオドの答えは「元ネタへのリスペクト」、「価値観の転換」、「新たな価値観の付加」だ。
フェイクで溢れる世の中に流されてオリジナルを失うのではなく、自分たちが本当に創りたいものを出していきたい。リアルを追求したい。「お前らの偽物をぶっ倒す」という強い気持ちをコレクションにぶつけた。
毎シーズン、ダンスステージから始まるアクオドのショー。力強いパフォーマンスで、観客の期待は高まる。
ランウェイにはEXILEのネスミスや、元KAT-TUNの田口淳之介、俳優のノ・ミヌらが登場。
攻めの姿勢となった今シーズンは、金属、レザーを用いて強さを表現した。モデルの特徴的なヘアには、世界各国の新聞が使われている。
名画『モナ・リザ』が用いられたグラフィックプリント。カモフラージュ柄は戦場では擬態するものとして用いられているが、現代のファッションでは主張するものとして価値観の転換が行われている。パロディも多い『モナ・リザ』をサンプリングし、新しいカモフラージュ柄を生み出した。
額縁をモチーフとして用いたルックも数多く登場。ランウェイの入り口にも巨大な額縁が置かれていた。フレームで囲うことで、自分たちの作品であるという意思表示をしている。
アクセサリーは、昨シーズンに引き続き、レディー・ガガやリアーナが愛用しているジュエリーブランドCHRISHABANAとコラボレーションした。
ショーのラストでは、モデルがブランドのロゴのフォーメーションを組んだ。一人一人異なるルックを身に纏い、色々な要素をロゴに組み込んでいる。
その後、ランダムに動き出すモデル達。既存のものを組み合わせアウトプットするサンプリングそのものを、モデルの動きで具現化した。
デザインをコピーされた経験があるデザイナーのチャヌ氏。ショーを通して伝わってきたのは、「本物」に対する熱い思いだ。ショーという形でしか見られない演出。世の中に迎合するのではなく、本気で創り出したいものを追い求めたルックの数々。たとえ模倣されたとしても、「偽物」は「本物」に追いつけない。アクオドの、自分たちのクリエイションに対する揺るぎない自信が感じられた。
Text / 川井恵
Photo / 中村宜嗣