Fashion, Tokyo 2017-18 A/W

KEISUKEYOSHIDA 2017-18 a/w collection

 50年前に見たフューチャー、その50年後に見るフューチャー


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 3月23日、KEISUKEYOSHIDA 2017-18 a/wコレクションが発表された。今回のイメージのベースとなったのは60年代のファッション。60年代といえば今の60代後半から70代が若者ファッションを牽引していた時代だ。それまでのクラシカルで伝統を重んじていた感覚は鳴りを潜め、若者の間では既存の社会規範を打ち壊すような空気が流れていた。その代表格がミニスカートの登場であろう。脚を大胆に露出する格好は大人たちから白い目で見られ、反社会的で公序を乱すと批判された。しかしながら、斬新で衝撃的な新しいファッションの登場は瞬く間に世界中に広まり、後のストリートファッションに影響を与えることとなった。

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 女の子たちが大胆に露出して鮮やかな洋服を身にまとっている60年代のフォトブックが今回のテーマを決定的なものにした。何よりも吉田氏を惹き付けたのは自由な雰囲気と笑顔だったそう。高度経済成長期真っ只中、人類が月に行けるかもしれない、ありえないことができるかもしれないと世の中は未来に対する期待にあふれていた。まさにその時代、ピエール・カルダンの宇宙服を模したコスモコール・ルックのように、50年後の今、ファッションを通して明るい未来を模索したいと作品を作り上げた。と言っても、「明るいのか暗いのかわからない」のがKEISUKEYOSHIDAというブランドの面白みである。ピンクや赤などの明るい色であっても少しくすませて使うことで、根っからの明るさではない’らしさ’を表現していたように感じる。
 

 また、現代は色々なことが便利になってきていて人がロボット化しているように感じると吉田氏は言う。そこで逆に風が吹いてもなびかない髪、光沢がかったメイク、全ルックで統一されていたラメのブーツでロボットを表現し洋服を着せることで、感情を求めてひと化していく’もしかしたらの未来’を表した。

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 ファッションの瞬間性


 中でも学生服のようなプリーツの入ったスカートやフーディーを開いてセーラーカラーのように見せたデザインが印象的である。未来に向かって明るい希望を持って生きると同時に、ああでもないこうでもないと模索するようなあやふやな精神性は若者独特だと大人は言う。吉田氏はそんな若者たちが生き生きとするような洋服が作りたいと終始語っていた。この記事を書いている私自身、ファッションデザイナーが私たちの不安定な精神性を魅力的だと語ってくれたことがとても嬉しかった。「大人が作る服を選んで着るのではなく、その時の感情そのものに向き合い新しいものを作る」そんなクリエーションに対するメッセージが込められているように感じた。違う言い方をすれば、ファッションはこうなりたいと思った瞬間に自分で変えることができる、つまりいつでも新しい自分を叶えられる素晴らしいツールだということなのかもしれない。

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 ブランドらしさを残しつつ60年代という視点を取り入れた今季、KEISUKEYOSHIDAは不安定な内にこもった精神性こそがストリートカルチャーだと教えてくれた。自由な装いは着る人だけでなく、見る人の気持ちも明るくし勇気付けるだろう。50年後の未来にはどのようなファッションが生まれているのだろうか、少し胸が高鳴った。
 text/須藤志央里
photo/萩谷祐一郎

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