Fashion, Interview, Student, Others

Keio Fashion Creator なぜここで活動するのか。

服飾サークルで活動する学生、その根源は。



ファッションに関心をもつ大学生が集まって活動する、ひとつの服飾サークルがある。Keio Fashion Creator(以下ファッションクリエーター)。製作・演出・広報や営業などを全て自分たちで手がけており、製作チームは服飾専門学校のエスモードジャポンで服作りを学び、1からファッションショーを作り上げる。第一線で働くプロから服作りを学ぶだけあって、そのクオリティは高いといえるだろう。

彼らが何を考え活動しているのか。ファッションクリエーターの島田檀さん、篠崎莉奈さん、野中璃大さんの3人にインタビューで迫る。

―――ファッションに興味をもち始めたのには何かきっかけがありましたか?

(島田さん)大学1年生の時にNYのマンハッタンに行ったんです。そのときZARAで購入したコートを着ていたんですけど、街行く人がそのコートを褒めてくれて。それが凄く嬉しかったんです。そのとき初めて、普段何気なく着ていた“服”というものに対して好感をもちました。そこからファッションにどんどん興味をもっていった感じです。さらに丁度同じタイミングで幼馴染もファッションに興味をもち始めたのもあって、お互いに刺激し合いながらどんどんハマっていきました。

(篠崎さん)私はこのタイミングで好きになったとかは特にないですね。ただ毎日なくては生きていけないものであるので、とても身近で特別な存在であると感じています。

(野中さん)僕もこのタイミングっていうのを意識したことはなかったです。でも今考えてみると、自分を取り囲んでいるものとは違う文化に触れたときなのかもしれません。中学生の時も、ファッションに特別興味をもっていたわけではないんですけど、ネットで海外のスナップを見ていたんです。そのスナップでは雨が降っていたみたいなんですが、そこに写っていた人は傘を差さずにアノラックパーカーを着ていて。しかも靴も履いていないんです。それを見たときに初めて、文化が違えばファッションも違うんだなと感じたように思います。そこからファッションって面白いなと思いはじめました。

―――どうしてファッションクリエーターに入って服を作ろうと思ったのですか?(島田さんと篠崎さんは現在サークルでデザイナーを務める。野中さんも前年までデザイナーを務めていた。)

(島田さん)元々手を動かしてモノを作るのが好きだったんです。昔ロッククライミングに熱中していたんですけど、そのときチョークを入れるバックを作ろうとふと思って。家のミシンを引っ張り出して見よう見まねで作ってみたら、案外気に入るのができて。それで服もやってみたら意外と形になるんじゃないかって思ったんです。そんな時にこのサークルがあることを知って、ここなら服が作れると思って入りましたね。

(篠崎さん)サークルに入って服を作ろうということに、あまりハードルを感じませんでした。私が初めて服を作ったのは高校の体育祭のときで。あとはジャケットを作りたくなって、自分のブレザーがどんな作りになっているのか見て作ったりもしましたね。私も最初は見よう見まねで作ったんです。そんな経験もあって、時間さえかければ、どんなものでも自分の手で作れると思っています。あとは将来ファッション業界で働きたいとも思っていたので、服飾専門学校の指導を受けているというところで実際の現場に近いことも学べるような気がして、このサークルを選びましたね。

(野中さん)高校生の頃、すでに服が好きだったんですけど、当時自分のファッションに対する熱を触発してくれるものはネットにしかありませんでした。周りに話のあう人はいなかったんです。そんな時に知り合いからこのサークルを教えてもらって、勢いで入って、勢いでデザイナーになったという経緯ですかね。僕はもう、デザイナーという役職をやっていないんですけど、やっていたときは頭で考えてばかりの進め方をしてしまって。なかなか上手く進まなくて、それがすごく嫌でした。それに演出の部署に移れば、大学で学んでいる建築にも通ずるものがありそうだなと思って、デザイナーから演出に移りました。

―――学校でもなく、仕事でもなく、あくまでサークルです。サークルだからできること、サークルだからできないことを感じることはありますか?

(島田さん)学生の身で服飾サークルに入っているから、企業とは違ってビジネスとかトレンドにとらわれないモノづくりや発信ができるのが僕らの強みだと思います。ただ、1個人ではなく団体としてやっているので、もちろんどれも好き勝手にできる訳ではないというのを感じています。

(篠崎さん)私はサークルだからできる、できないっていうのは、あまり感じていないです。サークルだからというよりは、“東京のサークル”だからというのを強く感じています。海外にいって色んな人と話してより感じるんですけど、学生のサークルでありながら企業から協賛をもらって活動しているのは東京ならではであって、当たり前ではない。ファッションの地としても有名なこの東京で活動しているので、可能性は無限大に広がっていると思っています。

(野中さん)ここはインカレのサークルだから、色んな人が集まってきます。色んなことを学んで、色んなことを考えている人たちが集まって、ひとつのことについて考えられるのはサークルならではだと思います。ただ、みんな学校とか他にも頑張らなきゃいけない場所があって、僕が何か熱量をぶつけたときに、必ずしもそれが100パーセントで返ってくるわけではないのもサークルっぽいなって感じています。

―――同じ世代の同じファッションが好きな学生ですが、服飾専門学生と服飾サークルに所属する大学生の違いを感じることはありますか?

(島田さん)僕は一度大学を経験してから専門に行っているので、すごく感じることがあります。専門だとファッションをメインに学んで、ファッション業界に進むことがみんな目標で。だからファッションのことにしか興味のない人は多いんです。大学生は、専門分野というのはあっても教養もあって色んなものを学ぶから、色んな視点からファッションを見ることができる。だから専門学校に通う僕は、今も自分とは違う視点をもったサークルの人たちに刺激をもらうことはすごく多いです。

(篠崎さん)私は専門分野が違うだけかなって思います。私の場合は、大学で外国語を専攻していて、服飾専門学生の人たちはファッションに関することを専攻していて。触れている時間に違いはあっても、ファッションと向きあっているっていう事実は、専門学生も服飾サークルに所属する私たちも一緒かなと思います。

(野中さん)僕は勝手に想像しているだけなんですけど、専門学生の方が覚悟が決まっていて、エネルギーがあるのかなって。大学生は専門分野というのはあっても、将来いろいろな分野で仕事ができます。専門学生はもうその分野でしか仕事ができなくなると思うんです。ただ、自分とは違う考えをもった学生が集まるサークルという場は、すごい刺激をもらえて世界が広がる場だと感じています。

―――ファッションクリエーターでの活動によりご自身が変化したと感じることはありますか?

(島田さん)僕はこのサークルに入って、服を作ることを経験して、ファッションというものに夢中になりました。結果として今、大学を辞めて専門に通っています。本当に人生変えられたなって。きっとこのサークルに入っていなかったら、普通のサラリーマンにでもなっていたのかなって思っています。

(篠崎さん)大学入学のタイミングでサークルに入ったので、私自身の変化がサークルによるものか、大学によるものかは判断しづらいです。ですが、大学に通いつつファッションに関わって活動することで、自分の関心を深める環境に身を置くことができたと感じています。
ここでファッションについて考えたり制作したりしていくと同時に、大学の授業でも服やファッション、表象文化論などについて学ぶと、異なる二つの場所で学んだ物事がリンクしていって、それがすごく面白いんです。ファッションクリエーターに入ることで、色んな人と関わって色んな経験をさせてもらえたので、自分なりに良い選択だったと思います。

(野中さん)服が好きって感情だけで、入った当初は自分に何もなかったんです。だけど、色んな人がいるこのサークルで、そこに居るだけですごく刺激をもらえて。ここに入ってから、アートとか音楽とか、関心のある分野の幅が広がりましたね。周りの人を見ていると、大学で建築を学ぶ、同じ作ることに関わる人間として負けられないなって。色んなことを吸収しようっていうエネルギーが働いて、自分自身を変化させたように感じています。






ファッションクリエイターは12月には活動の締めくくりとなるショーを控えている。“様々な人からの支援を受けているからには、社会に対してメッセージを提示するような立場でなくてはならない。一方的に発信するのではなくて、観客側からもリアクションをもらえるようなショーにしたい。”とショーに対する熱意を見せてくれた。ショーでは、昨年までなかったメンズルックも登場し、インスタレーションも同時に行われる予定。今回のインタビューで、“いるだけで刺激をもらえる”と語ってくれたファッションクリエーター。きっと彼らの作り上げるショーもまた、見る人に何らかの刺激を与えてくれるのではないだろうか。


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左からインタビューに協力してくれた島田檀さん、篠崎莉奈さん、野中璃大さん。


text/akane sato
photo/riku matsuzawa


Keio Fasion Creator 2016 「preconception」

▼date
2016.12.17(sat)

▼timetable
installation 12:00-18:00
1st show 13:00
2nd show 15:00
3rd show 17:00

▼place
TEMPORARY CONTEMPORARY(東京都中央区月島1-14-7 2F)

▼entrance
free

予約はこちらから
https://keiofashioncreator.wordpress.com/reservation/