「なにもなにも、小さきものは、皆うつくし 。」
matohuの2017SSコレクションが、スパライラルホールにて発表された。テーマの『うつくし』は、美しい、ではなくかわいい、愛らしいの意。会場は鉄琴の音が響き、matohuらしいほっこりとした幻想的な空間が広がった。
繊細な愛らしさのなかにも大人っぽさや優しさのある“かわいさ”を表現したかったという。シルエットも全体的に柔らかく、レースや刺繍が施されたジャガードに擦り織をあしらったものなど、繊細で手の温もりを感じるようなコレクションであった。
コレクションの中には日本の手工芸品である津軽の下河原焼を使ったハトのブローチも登場した。伝統的な考え方や物を現代のものの中にどう落とし込むのか。また、いかにして新しさを提供し、まるで初めて知ったものかのように受け取らせるのか。この二つについて考えていきたいと、デザイナーは語った。
今回のテーマである『うつくし』。
今日では、ギャルファッションやゴスロリなど奇抜でインパクトのあるファッションも“カワイイ”と呼ばれ、今は何を見てもカワイイ!という言葉を使う頻度が多く、“かわいい”の基準が広がってきた。そんな中今回のテーマのような“かわいい”は、古き良き日本を表すものであり、日本人の心に響くものでろう。愛すべきものや守りたくなる存在を生活の中で慈しむ時、心は和み、頬は緩む。そんな優しい癒しを、忙しない日常のなかで大切にしていきたいものだ。
Text/諏訪ふみ
photo/瀬戸まこ