Fashion, Interview

革職人、曽田耕氏へのインタビュー(partⅡ)

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革職人、曽田耕氏へのインタビュー(partⅡ)



曽田耕さんは革で靴や鞄などを作る革職人である。しかし、その作品を見ると多少なりとも驚いてしまう。バスケット籠のようにぼこぼこと穴の開いたバックや、本来ならば捨てられてしまうはずの革の断片を継ぎ接ぎして作ったサンダルやブーツ。そのどれもが既成概念を飛び越えた自由で柔軟な(曽田さん流に言うとアバンギャルドな)作風のもと、制作されている。この場所で生み出される曽田さんの靴や鞄の数々 その少し風変りで、とびきり温かい魅力の根源はどこにあるのだろうか。そのヒントは、どうやら彼自身の生い立ちの中に隠されているようだ。(partⅠより)
 
 
『”やってみる”から始まる』
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高校を卒業してから1年後、曽田さんは靴の職業訓練学校に通い始める。それでは、この高校卒業後の空白の1年間で何をしていたのか。ここでの経験が、間違いなく今の曽田さんを形成する上でかなり重要な要素となっているだろう。
 
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「ずっと確かめたかったことを延々と確かめていたんです。節々で”これおかしくないか?”っていう経験をしてきていたんでしょうね。分かるまで確かめて、色々理由付けして、納得したかった。」
 
そして飛び出す、トンデモナイ”実験”のエピソード。動物を自分で殺せないと思えばベジタリアンになってみたり、服はどのようにして作られるのかと疑問に思えば畑を借りて綿から自分で育ててみたり、動物の皮を剥いだことがないのに作品に革を使っていいのかと思えば野良猫の死骸を拾ってきて自分でその皮を剥いでみたり・・・思わず「そこまでやる!?」と耳を疑ってしまうが、その過程の中で、プロセスを知って、その上で自分で作れないものは使わないというポリシーを確立した。
「自分が進学しないと決めた時は、確かめたいことが多すぎて。とにかくわくわくして、もう翼が生えたような感じです。だから、不安なんていう文字は頭の片隅にもなかったですね。」
 
 
 
『お母さんのアップリケ』
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曽田さんは作品を作る際、基本的にコンセプトを立てない。「コンセプトを立ててから作り始めるということには少なからず違和感があります。僕の場合は、デザインをしなくても”ここがこうなったらいいのに”っていう反省が起きるんですよ。だから、コンセプトを立てて作るっていうよりは、そういった構造的な不具合をどう解決していくかを考え、試し、繰り返して気が付けば仕上がっている感じですかね。」
 
その核心にあるのは、”自分は選べる立場にない”という意識だという。
「使える材料も道具も、1人で作っていますからもちろん労力だって限られている。そういった中でものづくりをすると、デザインというか、机上の仕事というか、頭の中で計算する余地はあまりなくて。日常のものづくりというか、”お母さんのアップリケ”みたいなノリだと思うんですよ。こういうものがいるな、と思って今ある材料と道具を使って作っていくと、コンセプトを立てるまでもなく出来上がってしまうんですよね。そういう風にして出来上がったものって結構構造的なものになるんですけど、それが自分の実感としては『美』なんですよね。」
必要だから、作る。理由のすぐ隣に答えがあるものづくり。それは、人間の営みとして、非常に自然な流れのように思える。極限までそぎ落として、本当に必要な要素だけを最小限の手数で取り入れる そういった日本的な、引き算の美学がそこにはあるようだ。
 
 
 
『新たな試み』
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「ファッションもアートも嫌いで、今までは遠い存在だったんです。どちらも身勝手というか、嘘くさい印象があって。」という曽田さんの言葉は少し意外だった。
しかし、その意識も最近変化し始めているという。
「人から、あなたがやっていることはアート寄りですね、だとかファッショナブルですねと言われることが何度も重なって、それでようやく意識するようになったんだと思います。それで少し興味を持って近づいてみたら、別世界だと思っていたけれど接点があったんだ、と気付くことがあったり。だから、自分はまだそういう方面については目覚めたばかりなんですよね。」
その変化の表れとして、今まで避けてきた量産やデザインといった新たな分野にも視野を広げているという。例えば、今取り組んでいるのは”華奢な靴”というコンセプトのもとでのパンプスの制作。これまでの、どちらかというとガッシリとしたフォルムが特徴的な作品、そしてコンセプト立てしないというやり方に対して、正に新たな試みと言えるだろう。
 
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そのような変化がありつつも、本人の核の部分は昔から全く変わっていないという。
「要は”やりたいことしかやらない”ということで、変わらないどころかむしろヒートアップしてるかもしれませんね。変わったのは世間の方じゃないかな、特に3.11の後は。今まで当たり前に思っていた”安定”のようなものに疑問を抱くようになった。それでお客さんやメディアが理解しだしてくれたり、”手作り”自体が市民権を得てきたり…そういう意味ではどんどん融通が利くようになって、やりやすくなっているように感じます。だから、以前は多少いい恰好した商品に見えるように作っていた部分もあったけれど、今となってはもう、もっとやりたいように、ひどいことやってやれって(笑) その中でメッセージを伝えることが仕事ですけど、いきなり社会全体に伝えることは難しい。きっと、直接会って話す人だとか、作品を手に取ってくれた人で精一杯だと思います。だからまずは、そういう人たちに伝わればいいな、と思っています。」
 
 
作品、ものづくり、そして人に対する曽田さんの一本筋の通った愛情 これこそが、曽田耕ブランドの魅力であろう。
 
薪ストーブが、ぱちりと音を立てた。
炎が煌々と、温かな光を放つ—
 
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Text / makiko,miki
Photo / azusa

 

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web site “kou’s shoes” : http://www.sodako.com/


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