Fashion, Interview

さとうかよ

 
ひつじ2-235x300のコピー

悲しい現実の中で自分は何が出来るのか。
ぬいぐるみのお母さん、さとうかよさん。彼女の作品をより魅力的にするスパイスとは。

 

人の手を離れたぬいぐるみを繋ぎ合わせ、新たな命を吹き込む。さとうかよさんはぬいぐるみのことを知り尽くしたぬいぐるみのお母さんのような人だ。
 

かわいいんだけど、どこか悲しくて滑稽で、見た人の心のどこかに不思議な余韻を残す彼女の作品たちは「可哀想と可愛いは似ている。」という彼女の言葉の通り、「かわいそかわいい」。はじめて彼女が手掛けたぬいぐるみ作品も彼女が夢で見た「入れ歯猫」。彼女が実際に見た夢だからこそ嘘のない魅力的な作品が出来上がるのだ。



入れ歯猫


しかし、彼女の「夢」だけが彼女の魅力ではない。実は2010年はじめ、彼女は難病に倒れていたのだ。辛い治療、手術の末なんとか退院出来たものの、病の代償として彼女は心と体に大きな傷を負ってしまった。退院後も続く薬治療、手術跡、抜け落ちた髪。
 

「自分はここに存在していいのか?」
 

そんな思いが頭をよぎる隙を与えないように、彼女は術後すぐに馬とトラを作りはじめた。作品を作ることに集中することで彼女は自分自身を見つめ直す「瞑想」を行ったのだ。


そうしている時に起きたのが日本を震撼させた震災。東北地方太平洋沖地震である。この悲しい現実の中で自分はなにができるのか。重なってしまった悲しい現実の中で彼女は今までの自分を改め、真摯な姿勢で人にも作品にも接するようになる。「たいせつなもの」に気がついたのだ。アーティストさとうかよの再スタートである。



たいせつなことは


そうして2011年秋に渋谷パルコで行われた個展、「たいせつなものは、目に見えない」は、闘病生活中に何度も読んだという星の王子さまの言葉。術後作られた馬やトラも出演したメリーゴーランドは「たいせつなもの」とはなにか、見る人に訴えかけてくるようだった。
 

「嘘のない夢」だけではなく、「嘘のない現実」も彼女の作品をより魅力的にするスパイスとなったのだ。
 
そして現在、aquvii代官山店の二階で行われている新たな個展、「FREAKS」。今回はあえて生き物としてではなくぬいぐるみとして作品を作ったという彼女。FREAKS、「奇形」のものたちに闘病中の自身と重ね制作したという作品は頭が2つだったり、目玉が普通よりも多かったりと、どこか不気味で悲しいのに愛おしい。


zenntai

「わざわざ奇形の生き物を作るってよくないことだと思ってたから。本当は自然に産まれてくるもの。実際にいるものだから。嘘になると思って。わたしこんなもの作っていいのかっていう葛藤もあって。だけど、今世の中でやるべきことはこれだと思った。」
 

これから先、原発事故による放射能によって彼女の産み出した奇形の生物がもっと身近になる日が来るかもしれない。そんなとき、FREAKSな彼らにどう寄り添って生きていくのか。それは是非彼女の作品を見て考えてみてほしい。個展は12月12日まで、aquvii2階で開催されている。


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Text / Moeno

Photo / Azusa


Blog: http://kayotun.com


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