Fashion, Collection, Tokyo 2013 S/S

kielo; 2013 S/S


 

kielo; 2013 S/S
 
“Ligeia”

kielo;とは、フィンランド語ですずらんのことを指す。
 
kielo;は、デザイナー水野さんと矢島さんのお二人によって成るブランドである。その洋服は、ロマンティックでふわりとしていて、けれどそこに毒の混じったプリントがされているような、二面性が共存する不思議なものであった。
 

デザイナーのお二人は、ベルギーのアントワープ王立芸術アカデミーに在籍中に出会った。kielo;のヨーロピアンテイストや立体裁断、ドレスのようにたっぷりととられたドレープなど、西洋を感じさせるところは、海外での経験も大きいのだろう。ブランドのスタートはスイスで発表された2012S/Sからであり、今回2013 S/Sが日本ではじめて公開するコレクション。
  
今期のタイトルは”Ligeia(ライジーア)”。1838年に発表されたエドガー・アラン・ポーの短編小説であり、そのヒロインの名前である。ストーリーは、ライジーアという長い黒髪の美女を妻にもった男がいた。ライジーアは、病で亡くなるが男の後妻の遺骸から蘇る、というゴシック風の小説である。ポーの描いた精緻な美しさは、kielo;の洋服にも表現されている。
 

うつくしくて、はかなくて、けれどダークなもの。フォトシュートでも黒髪のモデルがkielo;の洋服を纏って、草原に立っている。
 

 
洋服のインスピレーションは子供服から得ているという。全体的にまるく、子供の曲線的なかわいらしさをイメージしている。子供服のサイズがすこし大きく、少し肩が落ちてしまうところから、ドロップショルダーで肩がゆるく下がるデザインのものも多い。また、発表会に子供が着るような、フレアのたっぷりとしたAラインのワンピースや、丸襟のもの、ケープなど北欧の子供が着る外国らしいデザインの洋服が並ぶ。メンズのサロペットもオーバーサイズで、大きい服を子供が着ることをイメージしている。素材も、サマーベルベットなど冬っぽく見えるが透け感があったり、宝石のついたファーは、一見ファーに見えるがシルクジョーセットを切り裂いて叩いてファーっぽく見せるなど、素材にもこだわっている。
 

そのファーも、イメージは死んだ獣の皮に宝石をつけて飾るところからきているなど、イメージソースは決してかわいらいしいものだけではない。洋服のプリントは、水彩で描いたものを転写しているというが、そのモチーフは毒蜘蛛や目であったり、前から見ると淡いプリントだが、背面が真っ黒なプリントであったりと、二面性があらわれている。童話からも影響を受けたというプリントやデザインは、シュールな雰囲気も感じさせる。

 
デザイナーのお二人で、デザイン画を持ちより、素材を合わせ、話し合いながらコンセプトやイメージを確認しつつ、最終的には水野さんがレディース、矢島さんがメンズを製作されている。

現在は日本で活動しているが、ロンドンやベルリンのコレクションは新人が多く実験的で刺激的なものであり、可能であれば海外でまた活動したいそうだ。
 
すずらんは小さく白い可憐な花を咲かせるが、その根や花は猛毒である。ロマンティシズムに溢れて、けれどシュールでダークな毒をもつ魅力的な洋服を作るkielo;の今後にも期待が寄せられる。



Text / Saku
Photo / kielo;
 





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