Fashion, Interview

tiit / 岩田翔氏、滝澤裕史氏にインタビュー

tiit
12 S/S collectionより岩田翔氏と滝澤裕史氏によって立ち上げられたブランド。




tiitの岩田翔氏と滝澤裕史氏にインタビュー。




■お二人がデザイナーになられた経緯を教えてください。


岩田氏:僕は杉野服飾大学に4年間在学していて、在学中から海外に興味があったので海外で経験を積みたいと思っていました。3年生の時に、アントワープ王立芸術アカデミーの3年生だった堀内太郎(現TAROHORIUCHIデザイナー)に一度コンタクトを取って東京で会ったりしていて、アントワープに行くかどうかという話になったのですが、諸々事情があり結局アントワープには行きませんでした。その後、堀内が帰国してTAROHORIUCHIを立ち上げ、同時に国内外の海外組が21 21 DESIGN SIGHTで「ヨーロッパで出会った新人たち」というイベントを開催しました。MIKIO SAKABE、TARO HORIUCHI、writtenafterwards、POESIE(現AKIRA NAKA)と海外のSTEREOTYPES,huihuiでインスタレーションとショーを行い、僕も携わらせて頂きました。そこからそういった人たちと関わりを持つようになりました。その時僕は4年生で卒業後はそのままTAROHORIUCHIに入る予定だったんですが、堀内に海外からオファーが来たことでTAROHORIUCHIが一度休止することに決まりました。そのことで僕も進路が未定になったので、堀内も相談にのってくれて色々と考えました。僕はもともとMIKIO SAKABEのデザインに興味をもっていました。プライベートでは交流もあって学生時代の作品や写真を見せてもらったりしていたので、時間を作ってもらい働かせてほしいという話をしました。堀内の推薦もありすぐにMIKIO SAKABEに入ることが決まりました。卒業してすぐにMIKIO SAKABEに入社し、そこから3年半働いてtiitをスタートして今に至ります。


滝澤氏:岩田とは同じ学校の同じクラスでした。僕は学生のころはセレクトショップで働いていて、卒業と同時にOKIRAKUに入りました。少ない人数で運営しながら大きな売り上げを生んでいるビジネス方法など様々なアパレル業界のことを学ばせてもらいました。彼(岩田氏)とは学生の頃から他の友人も含め仲が良くて、いずれみんなが面白いことをして成功できたらいいねとよく話していました。卒業後は別の会社でそれぞれ働いていましたが、退職するタイミングが近かったこともあり色々話をして二人でブランドを今年から始めることにしました。


■ブランドコンセプトを教えてください。


岩田氏:“日常に描く夢”というのをコンセプトの軸にしています。今って色々なファッションのかたちがあって、エンターテイメント性のあるものだったりウェアラブルなもの、もっと落としていったものがファストファッションだったり。時代によってもどんなファッションが盛り上がっているとか、どんな形で注目されていたり求められているかは様々だと思います。例えば90年代だったらヨーロッパのモードの世界では様々なメゾンが大掛かりなショーだったり、イメージ戦略だったりPR含めを重要な要素にして価値を生んでいた一方、東京では裏原宿というエリア自体に価値を付けそこから派生するモノや人、ムーブメントが大流行しました。僕は、ニーズがなければプロとしてやる意味がないと思っています。もちろんニーズを作り出すというのもひとつの手法なんですが、やっぱり時代にあったニーズっていうものも意識しないといけないと思うんです。時代と対話するという感じでしょうか。じゃあ今どういったものが求められているのか、その中で僕が提案するものはなにかって考えたときに、僕はリアルな生活の中にあるファッションから派生させ、ファンタジックな要素だとかどこか非現実的だとか何か変われるっていう要素を混ぜ合わせたイメージを提案しようと思いました。心の中にある、誰もが見たことのあるような、ウェアラブルな洋服の中にほんの少し憧れや心踊るような気持ちを生む色やディテールを足してデザインしていくほうがその人たちの生活にすんなり馴染みながら入っていける気がしたんです。改めて違うものを取り入れるというよりはすっと馴染んでいくほうが、今の人たちにやさしいかなと思って、それに僕にはそのほうが合っているような気もします。そんな様々な考えも含め、“日常に描く夢”というのを意識してデザインしています。




■“tiit”というブランド名の由来は?


岩田氏:ブランド名を決める時にあんまりこうしたいっていうのはなかったんですけど、意味のあるものは避けたいというのがなんとなくありました。ブランド以外にもこれからイベントとか企画もやっていこうと思っているので、そのプラットフォームになる場所のひとつにしたかったので意味をつけたくなかったんです。意味がありすぎると先入観が強くなりすぎて色々なことに派生しづらいなと思って。それで、僕ら二人の頭文字のtとiをとって並べました。レディースのブランドなので親しみやすくて音の響きが良いものにという感覚的に選んでいるところもあります。2人でずっとやっていくという決心的なことも含め、2人の頭文字から取ったということもありますが。




■デザインする上で大切にされていることは何ですか?また、素材や形へのこだわりは?


岩田氏:生みだすファッションにおいて関わるであろう人たちのことを一番に考える事でしょうか。
もっと具体的に言えば受け手や、手に渡る人のことを考えてデザインすることをとても大切にしています。
ファッションというコミュニケーションを通すことでそれぞれの関係性を潤すことが出来たらと考えています。
素材や形に関しては、シンプルなものからバランスを崩したりだとか、ディテールを少しだけ変化させたりだとか、大枠の誰もが見たことのあるワードローブというところは外さずに、ズレ感だけでちょっと非現実的な要素を足すことで、“何がいいから気になる、気に入る”というのではなくて“何か気になる”という、もっと潜在的な意識で共感を生めるようデザインしています。


―シンプルなのにどこか違う感じがしますよね。


岩田氏:そうですね。違和感とか、イメージが割とすんなりはいってくると思います。もちろん派手なものとかわかりやすいものっていうのも好きだし憧れもあるのでやってみたいとは思いますけど、ただ僕がやってみたいとか憧れっていうのは仕事としてやる必要はないですし僕がやったらきっと趣味の領域になってしまうので。僕はデザインする上で、何か違和感があるとか、どこか気になるとか、潜在意識をくすぐるようなレベルでデザインをしていったほうが長く心の中にのこるような気がするんです。ぱっと見のイメージだとか、後から付け加えたディテールのバランスの崩し方だと、たぶんその一瞬のイメージで完結してしまいます。長い目でみて生活と人と、ファッションのバランスで変化を与えるもののほうが、その時に斬新に変化させるよりも長く愛されるような気がします。提案したものがそんな存在になれたらやりがいもあるし幸せです。


■シーズンテーマやデザインといったアイディアはどういった場面で生まれるのでしょうか?


岩田氏:日々の生活で感じたことや触れた作品(映画や読み物)、出来事など様々です。
あとはまわりにいる友達や、街で見かける人にも強く影響は受けていると思います。
そこに過去の記憶や体験が混ざり合ってきます。





■お二人にとってファッションとは。

滝澤氏:今までやりたいことはいろいろあったけれど、今となってはこれしかなくなっていたという感じです。他に人よりできることもそんなにないかなっていう気もするし、雑誌を見るのも好きですし、買わない中でも洋服屋さんに行くのも好きですし。楽しいかなっていう感じですかね。


岩田氏:僕も趣味とかはないので、ファッション以外にやることがあんまりなくて。ファッションとは何かって言われたら自分にとってはあくまでも仕事なんですけど、でもやっぱりそれを仕事にしたっていう意味で、それが社会と接するひとつの機会ですし、やりがいみたいなことはあります。これで生きていくしかないとも考えていますし。あとは人と接する機会をもらった感じがします。僕はファッションを通じてじゃないとあまり出かけたりしないんですけど、ファッションが関係していると色々なところに行くんです、イベントだとか。ファッションに関係していなかったら知り合えていなかった人もたくさんいるし、ファッションのおかげで色々な出会いがあったりだとか経験ができている気がします。日々を動かしてもらっている感じですかね。でも決して消去法で選んでいるわけではありません。ファッションがとても好きだからやっています。そこは揺らぎません。


■今後の展望をお聞かせください。


岩田氏:コレクションの発表だけではなく、それに付帯するイベントの企画・制作だとか。これをやったらよくないだとか、仕事や企画を選ぶみたいなことはやりたくなくて、tiitをベースに様々なことをしてファッションにかかわらず色々な業界と関わっていけたらいいなと思っています。


色々な業界の人たちとおもしろいことをやれたらいいなと。それである程度の形と土台を築いて、ゆくゆくは若い人たちに場を提供できる立場になれたらなと思ってます。僕らが独立して業界に入っていくのがすごく大変だったので。若い人たちが夢を持てるような状況を作れたらいいかなと思っています。





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tiit web site : http://www.tiit-tokyo.com
Interviewer:Sakura Suda, Iori Fujimori


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