はるかきみへデザイナー、横田賢二氏インタビュー
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寒空の広がる昼下がり、私ははるかきみへのデザイナー、横田賢二さんのアトリエにいた。
はるかきみヘは2008年から横田さんが始めたレディースを主に扱っているブランドである。可愛らしく、その独特な立体感で存在感を放つ洋服を紡ぎだす横田さんにお話を伺った。
「僕自身が曖昧なものが好きということもあり、人によって違った角度で捉えることの出来る名前にしたかったんです。」とブランドの名前について話す横田さん。今回のインタビューを通して「こう聞かれたらこう答える」というようなマニュアルのような受け答えはなく、どうやらこのブランドを紐解いていく上で、「曖昧さ」というのは重要なキーワードなんだろうと思う。
私が洋服の立体感についてこだわりがあるのか聞くと、意外な返事が返ってきた。
「実はあえて立体的にしている訳ではないんです。見えない世界とのつながりであったり、自分の中の記憶であったり、今まで出会ってきたものを出来るだけ使って服に落とし込むことで、現実に見えるものにするというか。常にそんなイメージを持って服を作っていると自然とフワーっとした形になっているんです。」
常にその時々の自分に出来ること全てを服に注いでいるという横田さん。洋服の持つ意図的でない立体感はまさに等身大であり、現在の自分であるようだ。
「ただ現在の自分を服に落とし込むだけではファッションではなくアートに寄ってしまうので、実際に自分のブランドを着てくれる人や、制作を手伝ってくれる女性スタッフなどの意見や要望を取り入れながら形にしている」という。
またはるかきみへのもうひとつの特徴でもあるふんだんな生地使いについてはこう語ってくれた。
「人間って似ているようで違うじゃないですか。同じような作りのパーツを沢山持っていて、でも内面的なものも含め色々なものが継ぎ接ぎさせていくと、その中でそれぞれの違いが出来てくる。自分の作る服にもそういった人間らしい深みを持たせてあげたいという思いが、布使いに自然と出てしまった感じです。」生地同士を継ぎ接ぎすることで人間に近づけるという発想に私はひどく納得してしまった。はるかきみへの洋服をまた違った角度で引き立ててくれる事実である。
「あと僕、言ってしまうとこういう服嫌いでもあるんです。自分の中で本当はこういう雰囲気から脱却して全く違う服を作りたいって願望もあって。でもそこから抜け出せない歯痒さもまた、今作ってる洋服作りにも活きているというか。この作っている服に対する葛藤も、服作りに対して誠実な証なんだろうなって一歩引いて見ていたりもして。」と笑う横田さん。やってみたい事が沢山ある中、そこから何をチョイスするかでブランドの未来は大きく左右される。一歩引いてみる、というのはなかなか難しいことではあるが、横田さんははるかきみへのこれからを「目の前のやれることを全力でやっていくまで」と話す。
曖昧で、感情的で、やわらかい。
少しずつ、けれど確かに。はるかきみへはこれからも人間らしく変化していくのだろう。
はるかきみへ 2014 s/s cllection
はるかきみへWEBサイト:http://www.harukakimie.com
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photo / Kayano
interview & text / Martha