2013 S/S 東京コレクション
ADEAM 2013 S/S
「ELECTRIC OCEAN」
今季のテーマは「ELECTRIC OCEAN」。
歌川国芳の「宮本武蔵の鯨退治」のダイナミックな海の表現にインスピレーションを受け、それを始点に同じく国芳の金魚やエイの作品や葛飾北斎の「富嶽三十六景 神奈川沖浪裏」などの海をモチーフにした江戸時代後期の木版画をイメージソースとしたコレクションだ。この日本的なモチーフ選択は大学時代にデザイナー自身が日本美術に感銘を受けたことに端を発している。
ではなぜELECTRICなのか?それは「海が持つ電流のようなダイナミズム」と「エレクトリックカラー」という2つの側面を表現しているからである。キングブルーのルックに始まるコレクションは鮮やかなライムグリーン、シルバーグレーとまさにエレクトリックなカラーリングの連続。その色彩の強度を鮮やかながらも攻撃的にならないよう上品にまとめあげたところは、女性の感性を窺わせる。さらにマットでカラーを抑えたメイキャップやシニョンに向かって施された直線的な毛束のデザインもエレクトリックなイメージを強く印象づけている。
また今回初めてJFWに参加するきっかけとなったのは、新たに設けたNYのデザインスタジオの存在である。それにともない刺繍やオリジナルのプリントに挑戦したコレクションでもあった。上記の葛飾北斎の作品はビーズやビジュウを取り入れた刺繍によってその波の姿が表現され、冒頭のソリッドなカラーリングの作品は京都の反物屋に依頼して染め上げてもらったものだと言う。
イメージソースを大切に、その表現に努めた一方で、ぺプラムやロングテールのシルエットなどトレンドをテーマに則した形で取り入れた。こういった心配りができるデザイナーだからこそ、これからも流行に敏感な女性たちを惹き付け続けるだろう。NYのアトリエを拠点にしつつ、今後のJFWにも意欲的な姿勢を見せた。
Photographer / Mei
text / Natsumi