2013 S/S 東京コレクション
JENNY FAX 2013 S/S
「LOVE」
ブラウン管が並んだ円形のステージ、砂嵐のノイズ音でショーが始まった。
90年代のトレンディドラマからインスピレーションを受けたという今回のショーは、ひと昔前のOLのようなタイトスカートや肩パットはレトロで少しださい。しかし愛おしいような可愛さがある。そもそも日本語の「可愛い」という言葉は、「愛すべし」と感じたときに用いる言葉であるそうだ。ジェニーファックスのショーはまさに「愛」に満ちたショーであった。
なにしろ今回のテーマは「LOVE」である。
テレビに映るのはドラマ「東京ラブストーリー」でBGMは小田和正。
ショーは前半と後半で分かれていて、前半は「オフィスラブ」をイメージしている。OLのようなタイトスカート、ベストには女の子の刺繍や、チャイナドレスのような光沢のある生地を使用。さらにタイトスカートの上からシースルーのロマンティックなスカート。オフィスレディーがお姫様に、現実と非現実が入り交じり、ファンタジーな世界が生まれた。後半はウェディングドレスをイメージしている。
しかし真っ白なワンピースにも毒がある。ケーキナイフの刺さったヘッドピースや、ゾンビのようなメイク。「ラブは幸せだけでなく、ホラーな面もあるから」とデザイナーのジェンファンさん。チュールをたっぷりつかったドレスや、キルティングのボリューミーなドレス、純白のドレスが立ち並び、演出の雪が降り注ぐフィナーレは感動的であった。
今回この「LOVE」というテーマにした理由を訪ねると、ジェンファンさんは「最近2人とも(坂部三樹郎さん)忙しくて一緒にいられなかったので」と笑いながら答えた。その率直な一言で、このコレクションがますます愛おしくなってしまった。ジェニーファックスらしいとてもパーソナルな感情や思い出から生まれたコレクション。その魅力とは、デザイナーのシュエ・ジェンファンさんの魅力そのものであると改めて感じた。
Photographer / Ohno
text / Maui