Fashion, Interview

“Normal” Ross McBride インタビュー



“Normal” Ross McBride インタビュー
 

インタビュー原文の英語版はこちら


ADD:最初にアメリカ出身だと聞きましたが。
ROSS:そうです。アメリカのピッツバーグから来ました。
ADD:どうして日本に来ることになったのですか?
ROSS:カルフォルニア芸術大学にいたのですが、もっとグラッフィクデザインの勉強をしたくて。今まであまり海外にいたことがなかったので、第2言語や多文化について学びたいという気持ちもありました。それで、最終的に日本に行く事に決めました。アジアの文化にも興味があったし。それに、80年代の東京ほど現代のデザインを学ぶのに適した場所は無いと思ったからです。
  

ADD:じゃあ、日本に来られたのはかなり前になりますよね?
ROSS:そうですね。初めて日本に来たのは1983年でカルフォルニア芸術大学生でした。そして、1985年から日本で暮らすようになりました。
ADD:日本に来てからすぐ働き始めましたか?そして、日本での経験はどのようなものだったのでしょうか?
ROSS:最初の3年間はデザイン関係で何かをやり遂げるというよりかは、日本語の勉強と日本の環境に順応するために時間を使っていました。だから、日本芸術大学で授業を受けていました。そこを卒業して初めてデザイン関係の仕事をやり始めました。
当初、日本にいるのは3年間だけの予定でした。しかし、日本で良い代理店と出会えたので、もうしばらく滞在することにしました。もう少し長く滞在しよう、もう少し長く、もう少し長く、これを繰り返しているうちに結局アメリカへは帰らなかったです。
ADD:日本のデザイン業界で働いてみて、どう感じましたか?
ROSS:他の場所で働いたことがないので、欧米との比較はちょっとむずかしいですね。他の方に自分の職業を教えるとき「デザイナーです。」と答えると、通常は「ファッションデザイナー」の方を想像しますよね。皆、私のブランドをアクセサリーブランドだと思っているかもしれません。だから多分ファッションには少しは含まれているとは思いますが、自分の製作過程を振り返るとプロダクトデザインに近いと感じます。でも、自分のバックグラウンドはグラッフィクデザインにあります。
 
カラーリング等の作業になると自分の作品がとてもコンセプチュアルで、もっと形状というのに関係しているように感じます。製品がカラーリングやスタイリングの段階に入ると、私は作業を信頼する妻に全て託します。彼女はテキスタイルの仕事をバックグラウンドに持っているので、私よりもっとファッションに精通しています。
 

 
ADD:プロダクトデザインでは何をやり始めたのですか?
ROSS:まだ、グラフィックデザインをやっていた時、プロダクトデザインもやってみようと思いました。最初のプロダクデザインは時計でした。僕はなぜか時計が物凄く好きなんです。写真を見てもらえばわかると思いますが、2D用のマテリアルで、できていますが、形を失い再集合し3Dの形を成しています。最初の作品は成功で、私のデザインに対し多くの信頼を得ることができました。
ADD:なぜ、そんなに時計が好きなのですか?
ROSS:それ、とてもよく聞かれる質問です(笑 )それは“時”には漠然とし、情熱的でコンセプチュアルな概念があると思うからです。時を伝えるというのは歴史上でとても大きく強力な役を演じてきました。プロダクトデザインをやり始めた時、大量に時計をデザインしていました。そして、時計にかんする展示会を開くまでに至りました。けれども、その解釈のために今まで全ての時計をデザインしたわけでは決してありません。時計をデザインするのを好きになってから、ずっと長い期間それ以外のデザインしていますしね。
ADD:あなたのブランド “Normal”について少しお話していただけますか?
ROSS:今は時計ブランドです。でも、今後アクセサリーのような今までとは違う分野にも手を伸ばしてみようとおもいます。今思いつくのでも、財布、ペン、名刺入れなど様々です。将来の事は誰にもわかりません。もしかしたらアイウェアのデザインをしているかもしれませんし、私の妻はバッグのデザインに凄く興味がありますよ。
ADD: “Normal”では誰が主に働いているのですか?
ROSS:今は私と私の妻だけです。オフィスを拡大して、新しい事に事業を拡大したら誰か雇いたいですね。でも、今はまだ小さな会社です。
ADD: 最近はどのような事に取り組んでいますか?
ROSS:今は海外の会社とあるプロダクトに取り組んでいます。けど主には自分のブランド(Normal)の成長のために奔走していますね。ぼく達はブランドを2006年に立ち上げました。そしてその一年後、“Normal”をきちんとブランドにし、大きくすると誓ったのです。
  

ADD: “Normal”のコンセプトはなんですか?
ROSS:コンセプトはブランド立ち上げ当初に比べ洗練されてきました。ブランドは日本人である妻とアメリカ人である私が立ち上げました。ですのでハイブリッドな、Japanese-Americanなブランドにしようと考えました。妻と私は同じような影響を20世紀中旬のアメリカのデザインや日本の伝統から受けてきました。正直いって今のアメリカのデザインにはあまり興味がありません。ですが、それに比べ50年代60年代のそれは純粋でいて時代を超越していますし、今においても世界中の人々に影響を与え続けています。戦後、様々な興味深い発展がありました。それは、形状やマテリアルではあるけどもプライウッドのような面白い方法にも出会う事が出来ました。
日本のデザインにはいつも興味がありました。ミニマリズム、センスの良さ、など日本のデザインには目をみはるべき点が長い間ありました。これらは、日本人の感性に何世紀もの間生き続けてきました。
現段階でのNormalの主な美学はその雄々しさです。たくさんの女性が私のプロダクトを買ってくれますが、それらは主に男性用にデザインされたものです。どちらにしろ、女性用のプロダクトは拡大させようと思っています。いつも、他の人がどう私のプロダクトを理解してもらえるかには驚かされるばかりです。
 
 
ADD: “Normal”の価値はなんだと思いますか?
ROSS:“Normal”の製品全てに、いくつかとても重要なポイントがあります。1つめが素材に正直になることです。もしもレザーならレザーに見えるように、鋼なら鋼のように。フェイクレザーなどは好きではありません。素材は自然な特徴を保持するべきだと思うからです。私が思うに、もう1つはミニマリズムだと思います。不必要な装飾はあまり付けたくありません。同じように、現在の “Normal”のプロダクトを見てもらえばわかると思いますが、特にロゴなどはわざとつけていません。この決断はとても故意的に行いました。この世にはロゴという小さな広告が溢れかえっていると私は思っています。いつも身に付けるものを買うと、それはその人のペルソナ(仮面)をいっそう強力にしてくれますし、そのペルソナ(仮面)が他人のアイデンティティによって散漫になるのを防いでくれます。さっき言ったように、私たちは必ずブランドのロゴは時計の後ろ側にデザインしています。そうすればひと目ではロゴが見えないけれども、探すのは簡単ですから。
ADD:日本のデザインは1つの産業として考えれば今後どうなるとおもいますか?
ROSS:いくつかの理由で日本のデザインの未来についてとても心配しています。日本で素晴らしいデザインが生まれている中で、日本の教育制度、メディア、会社、そして政府は素晴らしいデザインが輩出されるような環境づくりを促進させるのが苦手なように私には思えます。とても高品質なデザインが日本で作られ続けているのに、世界中にそれをアピールするために、何かを変えなければいけない。日本の有望な若いデザイナー達は十分なサポートを得られていません。そのような問題を解決する解決策が出てきてくれれば嬉しいです。

Interview by Ethan Cline

Translated by Masaki Kakishita

Photo by Normal



 
Ross McBride ロス・ミクブライド
 
1962年10月10日アメリカ北東部ピッツバーグ生。1985年ロサンゼルスのカリフォルニア・インスティテュート・オブ・アートにてグラフィックデザインの学位を取得。その後日本大学研究生終了後グラフィックデザイナーとしてキャリアをスタート。五十嵐威暢に師事。1991年独立し現スタジオの前身となる<有限会社DESIGNATORIUM>を設立。この時の主なクライアントは(株)電通、(株)博報堂等で、代表作はNEC<BIGLOBE> CI、資生堂<エテゥセ・オム>BI。
だが次第にプロダクト及び家具デザインに興味を持ち始め、1997年新宿オゾンギャラリーにて最初の展示会<12 Timepieces>を開催し好評を得る。このとき発表したベートーベンクロックがE&Yの中牟田洋一さんの目に止まり、後に商品化される。こうして本格的にプロダクトデザイナーとしてのキャリアがスタート。
2000年1月、プロダクト・家具・インテリアのデザインスタジオ<株式会社ノーマル>を設立。この時期、数社のメーカーとの商品開発と平行して自身により立ち上げたプロダクトレーベル<Normal>スタート。
その後ロンドン100%デザイン、ミラノサローネ、アメリカ・ニューヨークのICCF等世界各国の展示会に多数参加。現在までにE&Y (イー・アンド・ワイ)、Max Ray (マックスレイ)、スターバックス・ジャパン、(株)ワールド、(株)ソニーのプロジェクト等に携わる。東京100%デザイン2005、2006年審査委員パネルメンバー。東京デザイナーズブロック2003ベストインスタレーション賞受賞。GOOD DESIGN賞3度受賞。
 
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